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あしながおじさん

2008年02月03日 17:31

『ジーン・ウェブスター』著 松本 恵子 訳 新潮文庫 221ページ

ジョン・グリア孤児院出身のジルーシャ・アボットに、ある日突然、幸福が訪れた。
謎のおじさんがジルーシャに出資して、大学へ行かせてくれるというのです!

そのおじさんは、自分の名前を明かさず、ただジョン・スミスとありふれた名前で呼ぶように指示しました。
おじさんについて分かっている事は3つだけ。
①お金持という事。
②女嫌いという事。(それは今まで出資してきたのが男の子ばかりだったからです)
③あしが長いという事。

彼女が見たおじさんは、孤児院を出て行く時に、車に乗る後姿だけだったのです。
彼女は、おじさんの事を「あしながおじさん」と呼ぶようになりました。
そして、おじさんが唯一ジルーシャに要求した条件は、「月一回、近況を手紙で報告する事」でした。

さあ、素敵な日々が始まりました。お小遣いで自由に物を買える事や、
一人部屋を持てる嬉しさを手紙に綴るジルーシャは、生き生きとしています。
本当に明るい気持ちにさせてくれる手紙です。私はとってもこの少女が好きになりました。

ちょうどその時、仕事で失敗して始末書を書かされていた私は、
その落胆から2、3日抜け出せずにいました。ジルーシャが感情豊かに踊るペン先で、
「私は今を生きます。過去に囚われて悩んでいては、幸せになれませんもの」と語り、
それによって元気づけられたのは言うまでもありません。

「あしながおじさん」は有名な作品ですが、内容を知らなかったのをすごくもったいなく思いました。
イメージって怖いもので、名前も素性も明かさない怪しいおじさんが、「お金が欲しいかそらやるぞ」的に、
幼い少女に近づくのかと思ってました。どんな先入観だ…。
ところがまあ、なんと素晴らしい作品でしょう。おじさんは手紙を要求するといっても返事は全く出さず、
する事といったら病気の時に花束を贈ってくれたり、夏休みに農園で過ごすことを強要したり、
奨学金を受ける資格を断らせたりといった事なんですが、摩訶不思議なおじさんの要求にもめげず、
ジルーシャはすくすく成長し、手紙も大人っぽくなってきます。

卒業後、夢だった作家への道へ踏み出すことになり、そしてついには知り合いの男性に結婚を申し込まれます。
こういう心温まる小説っていいですよね。本当に好きです。
だって、現実の社会生活って小説の世界と比べると、なんてゴミゴミしているんでしょう。
…でも、作品を読んでいると、その息苦しい生活の中にも幸せがある、そういう視点で物事を見よう…と思えます。

ジルーシャはこう言ってます。
「私は孤児院で育ったからこそ、普通の家族がある素晴らしさを人一倍分かる事ができる」と。

素敵ですよね。


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