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ふたり

2007年12月25日 21:00

『赤川次郎』著 新潮文庫 304ページ

交通事故で死んだ千津子は、妹の実加の心で生き続けていた。
生きること、死ぬこと、家族、生活、愛。読み終えて、本を閉じ、思わず拍手。
これまで読んできた赤川次郎作品で、最も感慨深い作品。

千津子と実加は仲のいい姉妹。エスカレーター式の同じ学校に通う、中学生と高校生だった。
姉の千津子は面倒見のいい優等生。妹の実加の方は、才能はあるけれど甘えん坊。
その日も、いつもと変わらない日常だった。朝ごはんを食べ、母親に急かされて家を出る。
毎日二人で歩いてきた駅までの道を急ぐ。そこに身を潜める悲劇に気付かずに。

突然トレーラーが姉の千津子の前に現れた。瞬間、細い体は何倍もの質量に押し潰される。
わずかに支えていた雑貨屋の梁が、残された姉妹の時間だった。
残酷に過ぎていく残りの時間を、千津子は冷静に受け止めていた。
自分が死んだ後、母親の事を頼む、と姉は言った。
そして、妹に「また、二人であのお好み焼きを食べたいね」と告げて逝った。

家族一人がいなくなるという事の大きさを、考えた事があるだろうか。
およそ14歳の女の子に、そんなことが想像できるはずがない。
ガラリと変わった家の雰囲気を、極力明るくしようと努める実加。
しかし、家族の負った傷はあまりに大きかった。

姉が亡くなってから二か月、実加は夜道で暴漢に襲われる。
必死にもがく彼女の体を押さえつけ、男は馬乗りになる。
「殺される…!」そう思った瞬間…

「実加!私よ!」
お姉ちゃん?
「しっかり!左手を伸ばして、石を取って!」

姉の声を頼りに石をつかみ、振り上げる。
ガツン!鈍い音と共に、男の腕から力が抜けていった。

その日以来、実加の頭の中には姉の声が聞こえるようになる。
生前のように変わらず言葉を交わす二人。
しだいに前向きに明るくなっていく実加。
暴漢事件後から、家族はしだいに明るさを取り戻していった。

実加は高校へ入学し、姉が亡くなった年齢になりつつあった。
家族を取り巻く環境も変わり、姉へ話しかける事も少なくなった。
実加はそんな自分が薄情に思えて後ろめたかった。

「いいのよ。私の事、いつまでも忘れないようにしようって、努力しなくても」

千津子の言葉に怒りをあらわにする実加。死んだ人を忘れていくのは酷い事なのか。
前向きに生きる事=悲しい事を忘れること。それは違うんじゃないのか。
実加が姉の力を借りず、自立の一歩を踏み出し始めた時…千津子は…。


家族の大切さ、人間が成長するすばらしさを、
死を経験した、ふたりの姉妹を通して語っていく傑作です。
赤川次郎さんが、ますます好きになりました。


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