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地軸変更計画

2009年11月19日 00:38

ジュール・ヴェルヌ』著 榊原 晃三 訳 創元SF文庫 242ページ

タイトルがまずインパクトありますよね。原題は「上もなく下もなく」。
とにかく無茶苦茶な計画と、呆れた登場人物たち、皮肉な結末。
夢とロマンの作家ヴェルヌらしくないと、発表当時から言われていた作品。
女性からバッシングうけそうな、「科学は男の世界だ!」的な態度も相変わらずです。

<あらすじ>
189×年、アメリカ政府は北緯84度より北の土地を(それを土地と呼べるのなら)競売に掛ける。
未だ北極が未知の世界だった時代。多数の冒険者の限界が北緯84度だった。
アメリカ政府は、「北極実用化委員会」という謎の集団を代理に立てる。
この奇妙奇天烈な競売に参加したのは、6カ国。特にすべての領土は自分たちのものだと
言わんばかりのイギリスが、アメリカに対して対抗意識を燃やしていた。

北極実用化委員会は、何を目的に北極を買おうと言うのか。
かつて陸であったと推測される北極には、今後人類がもっとも必要とする資源、
石炭の鉱床があるはずだ。彼らは、それを掘り起こすのが目的なのだ!
一平方マイル10セントから競りはスタートし、彼らは希望通り、イギリスを排して落札するのだった。

北極実用化委員会というのは、かつて月への宇宙旅行をなしとげた「大砲クラブ」の仮の姿であった。
会長バービケインをはじめ、ニコル大尉、そして書記のJ・T・マストンたちが主なメンバーだ。
落札に負けた各国は、挑発的に問いかけた。「どうやって人類未踏の土地へ行き、厚い氷を掘るのか!」
それに対し、バービケインはこう答えた。「地球の新しい支点を見つけ、地軸を立て直すのだ!」と。

「そう!木星にいるように」
軌道に対してほぼ垂直な自転軸を持つ木星のように。北極に行けないなら、北極に来てもらおうではないか!
地軸の傾きがなくなることで、季節の変化は無くなり、北極にも太陽が降り注ぐであろう!

当初、アメリカ世論はこの計画に歓喜の声を持って答えた。
しかし、計画の準備が秘密裏に進められるにあたって、人々の不安は募りだす。
地軸の大幅な変更に伴い、標高の変化による窒息死、水没による溺死という問題が出てきた。
世界は恐慌に襲われ、連邦政府は大砲クラブに調査委員会を差し向ける。
これらの計画すべての計算した天才数学者、マストンは逮捕され、手帳も押収される。
そこには、地軸を変更させる方法が、緻密な計算式とともに書かれていた!
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「大砲クラブ」のメンバーといえば、「月世界旅行」と「月世界探検」のシリーズもので登場。
今回はその主要メンバー、バービケイン、ニコル大尉ではなく、書記のマストンを主人公に設定。
前に紹介した「月世界へ行く」は、「月世界探検」にあたります。月へ同行したミシェルは登場しません。

ヴェルヌらしくない…と最初に書きましたが、主人公たちが「悪者」になっている珍しいパターン。
弾道学の追求や、資源から得る利益のため…という理由で地軸変更するわけですが、
その影響に比べて、それを行う理由が軽すぎる。石炭のために、地球が豹変していいのかってね。
ヴェルヌがわざとアメリカ人を「無茶苦茶」に書いて、滑稽にしているとしか思えない(笑)。
ちなみに今回のフランスは「いい立ち位置で様子を見ている」役。
各国のバカらしい争いに、祖国フランスを入れてないあたり、ちゃっかりしてますね。

今回は巻末の牧眞司氏の解説が、かなり参考になりました。
こんな夢あふれる作品を残しているヴェルヌも、甥に銃で撃たれた1886年の銃撃事件から、
編集者のジュール・エッツェルの死…と不幸が続き、晩年は人間不信の気があったそうです。
キャラクターの性格が、シリーズものの前後でかなり違う…という変化が作品に生じているとか。
たしかに、以前読んだ「月世界へ行く」と打って変わって、悪者の立場になった「大砲クラブ」のメンバーに、
戸惑いを感じえませんでした。人間描写もそれほど深くないので、一概に言えませんが。

そして今回もリアル主義が炸裂です。無茶な内容に真実味を持たせるためでしょうか、
気合入ってます。本作を書くため、必要な計算を大枚はたいて数学者に依頼したんだとか。
オチに関しては、勘のイイ人なら、読んでる最中に、だいたい見えてくるとと思われます。
ところで、私は未だに「月世界旅行」を読んでません。順番、また間違えてしまいました…あらら。


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