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失楽園(上)

2009年09月15日 00:54

『ミルトン』著 平井 正穂 訳 岩波文庫 443ページ

キリスト教三大文学、最後になりましたが「失楽園」をやっとこさ紹介です。
アダムとイヴが、楽園追放を受けるまでの裏話…といえば分かりやすいでしょうか。
いわゆる聖書の「外伝」みたいになってまして、上巻の主役格は堕天使となったサタン
長編の叙事詩という形式で、上巻には1~6巻の内容が入っています。
以下、失礼を承知で砕けまくったあらすじを紹介します。

<一巻>
天上で神様に叛逆して見事に負けたサタンは、地獄で目を覚ます。
メタメタにやられてる天使たちを鼓舞して、もう一度神と対峙しようぜ!と呼びかける。
堕天使たちはそれに答えて、パンデモニウム(万魔殿)を建設し、軍事会議を開くことに。

<二巻>
会議では「全面戦争だ!」とか、「いや、どうせ勝てないし、このまま暮らそーぜ」とか
色々な意見が飛び交うけれど、結局は今度新しく作られる世界(地球)で、
人間という生き物が作られるらしいから、そいつを悪(悪魔の側)に引き込んでやろう!
そして神に嫌がらせしてやろうぜ!という事に相談は決まる(この時点で少し笑える)。
誰が遥か地上までその任務を果たしに行くかという人選には、サタン自らが名乗り出る。

<三巻>
神様は「サタンが人間を堕落させる」と予見する。でも、「自分は人間を完全無垢に作ったし、
堕落するのは人間の自由だから、やれることやったし、後は知らん」と意外に淡白。
そこで神の御子(キリスト)が「自分が死んで償いますから」と申し出る。
キリストが十字架にかけられるのは、ここらへんの裏話があるんですね~。
一方サタンは、宇宙までやってきて、そこにいた大天使ウリエルに「人間はどこに?」と訊ねるため、
勉強熱心な天使に変装して、その居所を聞き出す(そんな簡単に騙されていいのか、大天使!)。
どうも神様以外は、「偽善」を見破れないらしい。天使は疑う心が無いからか。

<四巻>
エデンに来たサタン。アダムとイヴのあまりの美しさに「チクショー羨ましい!むかつくー!」と大激怒。
ウリエルはその形相を見て「あいつは堕天使だ!」と気が付き(遅い)、すぐ警備のガブリエルに報告する。
ガブリエルは二人の天使を派遣する。眠っているイヴの横で、ガマに変身し、その耳に
幻想を吹き込んでいたサタンを天使たちは見つける。槍でガマをつつくと、
「やべ!見つかった!」とばかりにサタンはびっくり(ここ、笑うとこでしょう)。連行されてしまう。
あわやガブリエルとサタンが一戦…というところまでくるが、天秤座が「戦わない」方に
重きを置いていたので、サタンは逃げ出す。

<五巻>
神はラファエルに、アダムとイヴに「サタンに気をつけろ」と忠告してくるよう命じる。
ラファエルは二人に、サタンがどんなに悪い奴かを語って聞かせる。
それは、天上にてサタンが神に叛逆して大戦火を巻き起こした物語だった。

<六巻>
引き続き、サタン軍vs神軍の戦争が語られる。サタンはミカエルと一騎打ちしたとき、
ぐさっと脇腹をやられ、「転々ところげ廻った」らしいです。相当痛かったんでしょう。
サタンは大砲を発明して一旦は優勢を見せるが、天使たちは山を根こそぎ投げつけたりと、
かなり無茶苦茶な攻撃をしてくる。三日目にキリストが出てきて、サタン軍は雷でボコボコにされる。
そうしてサタン軍は地獄へ落ちたのだ…というところまでラファエルは話し、サタンに気をつけろと諭す。
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聖書の内容やギリシア神話など、かなりたくさん出てきます。
キリスト教は唯一神ですが、そういう古典も融合しているんですね。
でも、基本はやはり「神」と「キリスト」を誉めたたえてるので、ミルトンが熱心な信者であったのは間違いない。
神がサタンが叛逆するのを止めなかったのも、サタンによってそそのかされた者が、
後になって改心すると、悔しいのはサタン自身でしょ?と余裕そのもの。全知全能なのです。

平井氏の訳に関しては定評が高く、私自身もかなりイイと感じました。
詩句の美しさは格調高く、それに加えて難しすぎずに楽しんで読める。
注目すべきは注釈。実に100ページ以上に及び、文献は広範囲に用いていらっしゃいます。
文学科でミルトンを研究する人なら、こんなありがたい本はないでしょう。
元が難しい叙事詩なだけに、その威厳を損なうことなく見事に現代語へ訳した平井氏に素直に感動!

下巻においては、アダムとイヴがついにサタンの手に落ち、楽園を追放されます。続きが楽しみですね~。


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