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アントニーとクレオパトラ

2008年08月04日 21:19

『シェイクスピア』著 福田 恆存 訳 新潮文庫 204ページ

『ジュリアス・シーザー』を読んだ後には、やっぱりコチラもチェックしたいところ。
シーザーが戦争や政権争いを中心に展開されていくストーリーならば、
『アントニーとクレオパトラ』は、愛の物語です。

第二回三頭政治が行われ、ブルータス陣営のシーザー暗殺を企てた元老院派を追軍し、
シリアへその進行を進めていた時、アントニーはクレオパトラに出会う。
舞台は二人がその冬をアレクサンドリアで過したあとから始まる。

三頭政治の当事者の一人である、のちのローマ皇帝一世、オクテイヴィアス(オクタヴィアヌス)と、
自分の妻ファルヴィアとが戦争を始めたという知らせがアントニーのもとに入り、
ローマへ帰還するアントニーを、クレオパトラが引き留めている。

どうもクレオパトラは政権を取るためにシーザー、アントニーと順々に男をたぶらかしたイメージが強く、
本当に愛した男は果たしていたのかどうか、疑問に思うところだけれど、
シェイクスピア劇では少なくとも、この2人は深く愛しあっていたようだ。

どうしても帰るというアントニーに拗ねてみせるクレオパトラ。
引き留めても無駄であろうことを分かっていつつも、ダダをこねてみせる。
大人の恋を知りつくした二人が見せる束の間の恋劇は、これからの悲劇の幕開けを思わせる。
歴史的事実でしか知らない美女が、シェイクスピア風味の女性に仕立て上げられているのが楽しい。
ラブラブっぷり全開で、他の史劇に比べると少し違和感があるけれど。

ローマへ帰ったアントニーは、オクテイヴィアスの姉と結婚し、一応は和平が成立したかのように思えた。
その知らせを聞いて、嫉妬に狂うクレオパトラ。
軍人として名を馳せたアントニーが、権力や政略を重視する本来の顔へ戻ったのだ。
しかし、アントニーが結婚をしたのはあくまでも政略上の事であり、結局はクレオパトラの元に戻っていく。

軍人としてのアントニーと、愛に生きる人としてのアントニー、
両面の人間性が見られるが、最終的にアントニーは愛を選んだのであり、
その為に名誉も死も恐れずに行動したのである。
この作品の見どころは、何と言ってもこれに尽きる。

では、歴史の事実はどうだったかというと、アントニーに関しては確かにクレオパトラを愛していただろうが、
肝心のクレオパトラの方はよく分からない。推測で物語を描くしかないシェイクスピアが出した答えはどうだったのか。

その後、アクティウムの海戦でオクテイヴィアスに敗れたアントニーは、
クレオパトラが自殺したという誤報を受けて、自らの命を絶つ。
歴史の流れから見れば、クレオパトラはアントニーの死後、
できることなら勝者であるオクテイヴィアスをも利用して、生き抜こうとしたように見える。
つまり、シーザーやアントニーをたぶらかした魅力で、オクテイヴィアスをも虜にし、
利用してやろうという魂胆である。しかし、彼をたぶらかすことはできなかった。

クレオパトラが自殺した理由はいろいろな説があるけれど、どれも信憑性がない。
シェイクスピアの劇中では、クレオパトラがアントニーの死を知り、その後を追う。
オクテイヴィアスに対しては新しい主人と仰ぐけれど、それは誰にも邪魔されずに死ねるように、
従うそぶりを見せていただけの事…という具合である。

クレオパトラはオクテイヴィアスへ「死んだら夫のアントニーのそばの墓へ埋めてくれ」と、
遺言を残している。けれど、これも甚だ事実かどうかは怪しいものだ。
ただ、シェイクスピアは伝えられているストーリーをそのまま素直に引用したようだ。

結果的に、私はこの作品には満足している。
悲劇というカテゴリーでは、『ロミオとジュリエット』に近いものがあるけれど、
若い情熱が死に向かって一直線に走り抜ける物語ではなく、
成熟した男女が色々なしがらみの中で愛に生き、そして死んでいく。
そんなストーリーが、歴史と絡み合って悲劇を構成するのが、なんともシェイクスピアらしいからだ。


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