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旧約聖書物語

2008年07月31日 23:22

『谷口江里也』著 ギュルダーヴ・ドレ画 アルケミア出版 431ページ

私はすっかりドレ画と谷口さんの織り成す世界にハマったようです。
アルケミア出版から出ている大型本、豊富な絵と共に読みやすく話を綴ったこのシリーズは、
本棚を飾る事のできる価値ある一冊だと思います。
「神曲」、「寓話」に続き、ドレの描く版画を豊富に収録した今回の題材は「聖書」。
人類になくてはならなかった物語、そして今まで一番人々に読まれてきた物語といってもいい聖書に、ドレが挑む!

ドレの作品は、どれも版画の可能性を究極まで追い求めている。
彼の活躍した時代は新しいアート、写真が登場した時代でもある。
そんな中で、ドレは版画によって物語を場面ごとに描き、新しい表現を生み出した。
絵を連続で映すのは、まさに私たちが見ているテレビの原理だが、それの原点でもある。
ドレの描く細かな表現は、写真に劣らず木版とは思えない完成度の高いものばかり。
今回もおなかいっぱい楽しめました。

さて、翻訳の方は谷口さんの手腕が今回も光る。
有名なストーリーが多いだけに、簡単にしすぎると翻訳者の個性が出すぎるし、かといってありきたりな書き方もつまらない。
そこらへん、難しすぎる言葉を使わない谷口さんらしさも出て、読みやすい文章でした。

内容はご存じの通り、アダムとエバの創世記から始まって、アブラハム、ヤコブと繋がり、
モーセの出エジプト、ヨシュア記、サムソンの出てくる士師記、ダビデの活躍が有名なサムエル記、
ソロモンなど有名な王が続く列王記、そして預言者たちが綴ったストーリーへ展開する。

列王記くらいから、王様の名前も立ち替わり入れ替わりで、ややこしくなってくる。
内容的は、王様が他宗教になびく→天罰が下る→信仰に厚い王様が出現→またその後継ぎが他宗教になびく、
この繰り返しのような気がする。要するに、一気に聖書の中身が政治的になり、物語から世界史へと内容が変化していったのだろう。
やっぱり絵的にも面白いのは前半の創世記~出エジプト記。
あらかじめ知ってる内容が多いだけに、絵を存分に楽しむことができました。

預言者たちの所に入ってくると、神様の嫉妬深さがMAXに。
自分を信じない民衆にかなり厳しいお言葉を下す。読んでると嫉妬深い女みたい。
いいわよ、いいわよ、私を信じないなら疫病流行らせちゃうんだから。
後で私を頼っても助けてやらないからね。後悔しても遅いわよってな感じ。

さて、こうして読んでいると、ふっと思う。
歴史上、今まで色んな宗教が発展してきたけれど、どうしてこの聖書が一番受け継がれたのか。
世界中に似たような伝承があるので、それをまとめた…という意見もある。
しかし、それだけでは説明がつかない。
やはり詩的でストーリー性豊かな物語が、大衆に受けたのだろう。
そして、それを政治に利用したという点も見逃せない。

新約聖書になると、隣人愛とかも含んできて、哲学的な面が入ってくる。
旧約聖書は純粋に物語として楽しむこともできる、ユーモアに溢れた話が多い。
こういう本は、目で見て楽しめる、読んで楽しめるの二重まるな入門書だと思います。


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