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脂肪の塊

2008年07月28日 22:59

『ギ・ド・モーパッサン』著 水野 亮 訳 岩波文庫 93ページ

モーパッサンの処女作。長編の「女の一生」を読む前に、こちらから手始めに読んでみました。
短編ながらも、人間のエゴイズムを強烈に見せつけられる作品で、質の高い小説だと思います。

時代はモーパッサンの生きた普仏戦争時代。
プロイセン(のちのドイツ)とフランスの戦いは、プロイセン側が勝利し、
この小説の舞台となったのは、おそらく戦後フランスを占領下に置いていた時代。

フランスのブルジョア階級の夫婦3組と、修道女2名、
民主主義で革命家のコルニュデ、そしてあだ名が「脂肪の塊」という太った娼婦が一人。
この10人がル・アーヴルまでの乗合馬車に乗っている人たちだった。

娼婦と上流階級と尼僧。すごい組み合わせで、最初から異様な雰囲気が想像できる。
馬車の中には軽蔑の眼差しが交わされただろう。何故かこういった場面に出くわすと、
人間は自分より劣っていると考えられる人種(それも間違いなのだが)と、
よりその差を拡げたいと考えるようで、上流階級の婦人連は、3人すぐに打ち解けたようだった。

雪のさなか、のろのろと進んでいく馬車。
予想に反して次の街に着かず、全員が空腹を覚えた時、娼婦がおもむろに食事を始めた。
他に誰も食べ物は持っていない。何かしら気になる視線を覚えたのか、娼婦は全員に食料を振舞う。
瞬く間に無くなってしまった食事だったけれど、それを機に娼婦は会話の輪に入り、馬車の中は打ち解けたようだった。

やっと夜、街に着いた馬車は、ドイツ士官の検査を受ける。
占領されているフランス側にとっては、緊張の一瞬だったが、特に問題もなく宿泊は許可された。
その日の晩、娼婦はドイツ士官の呼び出しを受ける…。

次の朝、馬車は出発できずにいた。
その理由はドイツ士官の気まぐれから来たものだった。
つまり、娼婦に情交の相手を迫ったけれど、いわば占領軍側の将校と関係を持つ事を彼女は拒み、
それが原因で、相手を務めるまでは馬車の出発はさせないという腹だった。

一度は愛想よくした馬車の面々は、それを知るに及んで…。

教養がつくほど、人間は自分の手を汚さずに、思う方向へ物事を運びたがるのだ。
娼婦に対して、「結果がすばらしいのであれば、手段がどれほど罪深くても許される」と、
遠巻きに話を進めていく人間たち。
娼婦は悩んだ。気分が悪くなった。しかし、決意した。

反吐が出るほど、モーパッサンの描く人間模様は容赦がない。
人間観察がかなり鋭い。イライラするが、完成度には感服する。
とても処女作とは思えない。「女の一生」も期待できそうな予感がします。


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