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ジュリアス・シーザー

2008年05月08日 22:35

『シェイクスピア』著 福田 恆存 訳 新潮文庫 188ページ

今まで読んだシェイクスピア作品では、最も私の趣味にあった作品でした。
とても面白く、民政から帝政へ移行するローマの動かしがたい歴史の流れを表した素晴らしい作品だと思います。

時はジュリアス・シーザー(ユリウス・カエサル)がルビコン川を渡ってローマへ進軍した後の事。
あの有名な「賽は投げられた」という名ゼリフを残したあとですね。
彼の人気はすさまじく、民衆の心は彼一人に傾いていた。
ローマは成立してからというもの、民主主義を貫いていた。しかし、ここにきてシーザーが
終身独裁官に就任。事実上彼の肩に政治が担われる事になった。
そうなると必ず面白くない人間が出てくる訳で、それがシーザー暗殺の顔ぶれになってくる。

キャシアスはその一人で、ブルータスを唆す役割を担っている。ブルータスは高潔な人間である。
些細な事にも正義を貫く志であるから、彼を持ち上げてシーザーを倒せば、民衆に対して
「民主主義のためにはシーザーを倒すしかなかった」という大義名分を訴えやすい。

キャシアスは言う。
「われわれのローマ、貴様は昔ながらの高潔を絶たれてしまったのだぞ!いつの世にせよ、
開闢以来こんなことがあったろうか、すべての功績がただ一人の男に帰せられるというそんな馬鹿な話が?」
ブルータスの心は動く。

かくて暗殺は実行される。その前日までには不気味な予兆がいくつも現れる。
生贄の儀式に使われた動物の心臓がなかったり、光を放つ人間が大勢突進するのが報告されたり、
不吉な歴史の転換点を思わせる。シーザーの妻も元来現実的な性格だったが、今日ばかりはシーザーに
出かけるのを思いとどまらせようとする。しかし、シーザーはきかない。

話は飛んで、シーザーが倒されて帝政が一度は防がれたと思われるが、その後事実上の後取りにあたる
オクタヴィアヌスがローマ皇帝一世となる。シーザーが普通の人間だったなら、これだけ不吉な予兆が続けば
何かしら恐ろしくなり警戒するはずである。確かに彼は権力を持ち、傲慢になっていたかもしれない。
しかし、私にはそれ以上にこの暗殺が動かしがたい歴史の歯車に組み込まれていたのだと思えてならない。

「ブルータス、お前もか…ならばシーザーよ、死ね!」
我が子のように思っていたブルータスにまでも裏切られてしまうとは…ならばもう私は死ぬ以外になかったのだ。
合計23箇所の刺し傷を受け、シーザーは倒れる。すぐに民衆に向かって弁明の演説をするブルータス。
英雄シーザーが殺されたことに戸惑いを隠せない市民たち。ブルータスは訴える。

「私はシーザーを愛していた。しかし、それ以上にローマを愛していたのだ」

ここだけ見たら、ブルータスすごい狡猾…。しかし、苦悶の末に暗殺を決意した姿は、彼の正義感あってのこと。
ジュリアス・シーザーというタイトルだけれど、マルクス・ブルータスという題名に変えた方がしっくりくるような気がするくらい、いい人なのです。

閑話休題。ブルータスの演説が終わり、民衆が「民主主義万歳!ブルータスよ、よく支配から救ってくれた!」と称賛した後、
アントニーが壇上に立つ。世界史ではアントニウスと習ったかもしれません。立場としてはシーザー側の人間。
暗殺の時にアントニーも一緒に殺してしまおうという案が出たが、そこは正義を愛するブルータスのこと、
ヘッドを倒せば充分だろうということで、余計な血は流さない主義。
アントニーは懇意にしていたシーザーが殺された事を、民衆に対して
「本当に彼はあなたたちを支配するような人間だったのか!?」と問いかける。
彼はブルータスの事を高潔な志と呼びつつも、巧みに民衆の心を動かしていく。
民衆がどちらの側につくか、決定的にしたのはシーザーの遺言状であった。
それはつまり、彼の遺産はすべての市民に分割され、それが一人につき75ドラクマずつになること。
1ドラクマは現在の価値に直すとだいたい1万円くらい?になるので、一人75万円ずつ。すごい!!

それを聞くと、それいいのかと思えるほど民衆はコロっと態度を変え、シーザー側に立つ。
こうなるとブルータスは反逆者扱いである。民衆は暗殺に加担した人間を殺すため、暴徒と化す。
その後は第二部的に、ブルータス対アントニーの戦争へと場面は移る。

以降は本編を参照して頂きたいのですが、これは本当に世界史好きにはたまらない一冊。
文体も美しく、歴史を憂うブルータスのセリフなんか重みを感じます。さすが福田訳!
シェイクスピアのお得意の寄り道ストーリーも少ないので、さらっと一本道で読めます。
シーザー、ブルータス、アントニー、オクタヴィアヌス…ローマに名だたるメンバーの
素顔、人間性を心行くまで堪能したい方は、是非読んでみてください!


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