スポンサーサイト

--年--月--日 --:--

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

人間失格

2008年04月26日 23:19

『太宰治』著 新潮文庫 166ページ

太宰治の完結した作品としては、最後のもの。
39歳という若さで自殺した作者が、人生で一度だけ自分の事を正直に描いた自叙伝。

久々に大きな感銘を受けました。ドストエフスキーの「罪と罰」を読んだ時も、
何とも言えない感動…いや、読み終えてからしばらくボーっと壁を見詰めてしまうような
不思議な感覚に陥ったのですが、この「人間失格」も同様でした。

太宰治の作品は、人によって本当に意見が割れるそうですね。
好きか、嫌いか。その真ん中がない作家として有名ですが、私は前者のようです。
沢山の作品を残している中でも、この「人間失格」だけは、先に触れたとおり、
その人生の中で自分のことをありのままに書いた作品であり、作風も他のとは全く違います。

物心がついてから、ずっと自分を見せず、おどけてばかりいた葉蔵という人物に
自分を反映させて書いた作品で、精神病院に入れられたことや、
女と入水自殺したことなど、その経験上の事がそのまま手記として表現されています。

金持ちのお坊ちゃんで、一人暮らしを始めて金がなく、女に養われて酒を飲む…。
まるで、人生のダメ人間の典型ですが、違うところは葉蔵が「生きるためにおどけていた」ということ。
他人が何を考えているのか分からない、どこで笑っていいか分からない。
だから、道化になって人を笑わせることで繋がりを保つことにした。
けれど、それは表面上の事。いつ、その仮面が破られるのかひやひやしながら生活している。

…ここまで読んでみると、なんだか他人事には思えない。
私もどちらかというと人見知りな方なので、沈黙が辛い。
ついつい変な事をしゃべってしまって失敗することも多々ありました。
そういう人間の距離って、確かに測りにくい。現在は幸いな事に、だいぶマシになってきましたが。
でも、それは人との関係の構築をうまくできるようになった訳じゃなく、
適当な距離感を置いて付き合うことができるようになってきたからなのであって…。
葉蔵の場合、その点がうまくできなかったのではないだろうかと思う。

葉蔵は内縁の妻を貰うが、彼女は全く自分にないものを持っていた。
酒を飲んだら結婚しないというのに、飲んでしまった自分に対し、
「ウソでしょう。飲むわけないわ。だから結婚しましょう」と無垢に信頼してくれる妻。
そう、「無垢に信頼」してくれるのだ。今まで人を欺いてばかりいた自分にとって、
それは全くの憧れだった。この人は自分を装って誰かを騙すなんて罪を犯さない人なのだ。

しかし、その妻がある日、他の男に犯されてしまう。
とても人を信じる女。信じるが故に、男に騙されて犯されてしまった。
葉蔵は衝撃を受ける。無垢に信じても、それが罪になることがあるのだ…。
憧れていたものがいっきに崩れ、汚い水に変わった。

責めることなんてできない。責めることのできる浮気は何と幸いだろう。
離縁をするか、夫が黙って我慢すれば解決できることじゃないか。
騙し続けた自分が悪いのだ。人は不幸を抗議できるが、自分にはその資格はない。
なぜなら、その原因を作ったのはすべて自分の欺きなのだから。

葉蔵は自殺を図るが失敗。
アルコール・モルヒネにはまり、その日その日のお金を春画のコピーで稼ぐだけ。
そう、ただ一切が過ぎていくだけなのだ。

「人間失格」

とても興味の持てる作家です。ここで紹介する必要もないほど有名なのでしょうが、そこはご容赦ください。
相手のためだからと、自分に嘘をついて振舞うのがいけないのでしょうか。
しかし、この世知辛い都会の中では、誰しも二面性を持ち合わせているのではないでしょうか。
人間が人間らしく生きたら、廃人になってしまった。
そう訴えるような、作者の声が聞こえてくるようです。

今更…と思われるかもしれませんが、ぼちぼち日本文学にも興味がわいて来たところです。
特に今回は強烈な印象でした。もっと沢山読まないといけないなあ…と再確認です。


参考になった!という方はゼヒ押してくださいッ →  にほんブログ村 本ブログへ

スポンサーサイト


コメント

    コメントの投稿

    (コメント編集・削除に必要)
    (管理者にだけ表示を許可する)

    トラックバック

    この記事のトラックバックURL
    http://hihidx.blog115.fc2.com/tb.php/119-69fd225f
    この記事へのトラックバック



    上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。