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シャーロック・ホームズの叡智

2009年09月30日 22:51

コナン・ドイル』著 延原 謙 訳 新潮文庫 271ページ

ついに最後の文庫になってしまいました、新潮文庫での最終巻。
今までに紹介した作品群は、カテゴリー「コナン・ドイル」よりどうぞ!

最後の物語は「シャーロック・ホームズ最後の挨拶」を紹介した時に書きました。
「シャーロック・ホームズの叡智」という作品は、本来ありませんが、
文庫の容量に関する問題から(別に問題ないとは思いますが…)、
他の短編集から削ったものを、最終巻として新潮文庫が出したものです。
なので、ホームズとワトスンが過ごした時期も交錯しています。

以下、作品名を、本来収録されてる短編集名と共に挙げます。

「技師の親指」 「緑柱石の宝冠」 
           … 「シャーロック・ホームズの冒険」より
「ライゲートの大地主」 
           … 「シャーロック・ホームズの思い出」より
「ノーウッドの建築士」 「三人の学生」 「スリー・クォーターの失踪」 
           … 「シャーロック・ホームズの帰還」より
「ショスコム荘」 「隠居絵具屋」 
           … 「シャーロック・ホームズの事件簿」より

訳者の延原氏が言われるように、日本での出版において、これらの作品を短編集から
省いてしまったのは、決して他の作品の劣っているというわけではない。

特に「技師の親指」が非常に面白かったです。
ワトスンのもとに治療を願いに来た男は、親指を切断されていた…。
その男、水力技師のハザリーは、スターク大佐という人物から依頼された仕事で、
殺されそうになったのだという。ワトスンはホームズを紹介し、その事件のあらましを聞く…。
それによれば、儲け話のために極秘で水圧機の故障を見てほしいと依頼を受けたが、
現場に着いてみると、謎の婦人に「逃げなさい!」と警告される。
報酬額の大きさに、その警告を拒んだハザリーだったが…。

…この本で、ホームズシリーズは本当に最後になってしまいました。ガックリ。
初めて読んだ時、こんな面白い探偵小説があったのか!と、感動したのもまだ記憶に新しいです。
イギリスへ行った際には、必ずベーカー街へ行きます!ああ、行ってやるともー!
またホームズを読み返す日が必ず来る事でしょう。それまでは、本棚に重鎮として居座って頂きましょう!


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失楽園(下)

2009年09月30日 01:25

ミルトン』著 平井 正穂 訳 岩波文庫 431ページ

ついにサタンの誘惑に負け、禁断の実を食べてしまうイヴ。
前半とは打って変わって、サタンの出番はガックリ減ってしまいます。
天国とか、天使サイドの話は、サタンよりお堅いので、ちょっと残念(笑)。
下巻では、7~12巻(1674年出版された第二版は1~12巻だった)の内容です。

<七巻>
ラファエルとの会話が続いているアダム。どのようにして地球が創られたのかを問いかけ、
あの有名な旧約聖書の冒頭部分「光りあれ!」から始まる、天地創造の6日間が語られる。

<八巻>
今度はアダムがラファエルに自分が生まれてからのことを語る。
この人、どうしても天使に帰ってほしくないようで、何かと話題を考え出す。
神様に「自分はアナタのように完璧じゃないから、伴侶を下さい!」とお願いして、
神様ももちろん承知済みで、肋骨からイヴを創ったことなどが語られる。
ひとしきり話が終わると、ラファエルは念押しでサタンに警戒するよう伝えて帰っていく。

<九巻>
一方サタンは…虎視眈々と人間を陥れる機会を狙っている。
イヴはアダムに仕事を分担して、別々に働くすることを提案する。
アダムはサタンを警戒する余り反対するも、「私は騙されません!」と自信アリのイブ。
その説得に負けて二人は分かれて仕事をしたのが運のつき…。
サタンは蛇に乗り移ってイヴを誘惑する。イヴは人間の言葉を話す蛇に驚くが…。
「蛇の私が、禁断の実を食べて、人間の言葉を話せるようになったんだから、
 人間のあなたがこの実を食べたら、どんな素晴らしいことになるか。きっと神になれますよ」
こんな風に騙して食べさせてしまう。愕然となるアダム。しかし、死なばもろとも…と自分も実を口にする。
たちまち羞恥が彼らを襲い、イチジクの葉で恥部を隠すことに。こうなったのもお前のせいだ!
いや、アンタのせいでもあるのよ!と二人は罪をなすりつけ合う。

<十巻>
天使たちは、二人が禁断の実を食べたことを知り、天国へ向かう。
「自分たちは見張りをして、やることやってました」と神様へ報告。神様も「うん、そーだね」と納得。
神様の御子(キリスト)は、二人のもとへ行き、「食べたね?」と糾弾。言い訳もできない二人。
罰として、妊娠の苦しみやら、寿命やら、額に汗して働くことになる。蛇にも罰が与えられ、
今のような地を這う姿に変えられてしまう。地獄からは「罪」と「死」が地上にやってきて、世界は急速に変わる。
アダムはイヴに「この蛇め!どっかいけ!」(酷い!)と罵るが、従順なイヴを許し、神様へ一緒に祈りをささげる。
他方サタンは、嬉々として地獄へ凱旋し、万魔殿で「俺はやったぞー!」と演説するが、
なんと仲間の堕天使や悪魔たちは、みんな神様の呪いで蛇に変えられてしまう。そしてサタンまでも…。

<十一巻>
二人が悔い改めて祈りをささげているのを見て、キリストは神様に「ほら、あんなに反省してますよ」と言う。
神様も少し納得したようで、「うん。でも楽園は追放するよ、ミカエル、行っておいで」と命令する。
ミカエルは地上に降り、二人に楽園追放になる事を説明。絶望する二人に憐み、これから未来に起こる、
様々な歴史をアダムに見せることにする。(イヴは眠らされる)。
内容は旧約聖書のカインアベルの兄弟殺しから、ノアの方舟までが幻で展開される。

<十二巻>
引き続き、旧約聖書の内容。アブラハムモーセなどが語られる。
戦争、殺戮、飢餓、疫病、淫蕩など、ありとあらゆる悪が世の中にはびこる事が、
すべて自分が禁断の実を食べた原罪によるものだと知り、悲しみにくれるアダム。
しかし、ミカエルは最後にはキリストがイヴの子孫から生まれ、贖罪をすることを伝えると、
アダムは喜び勇んで「新たな地で、正しい行いをして生きていきます!」と宣言する。
目覚めたイヴも「アナタについて行きます!」とアダムに言い、二人は名残惜しそうに楽園を後にする…。
-----------------------------------------------------------------------------
サタン氏、蛇に変えられてからお見受けしませんが…(笑)。
最初はイヴの姿を見ただけで、「なんて美しいんだ!」と一瞬復讐すら忘れるサタン。
でも、結局は「人間も自分たちの境遇と同じ目にあわせるゾ!」という気持ちを思い出し、
禁断の実を食べさせる…何とも中途半端な彼が好きだったんですがね~。

罪のなすりつけ合いをする二人のシーンが、やはり印象的でした。
確かにイヴは罪を犯したけれど、本当に悪を知らずにいた方が良かったのか?
自分が王様だと思っている狂人は「幸せ」だろうが、幸せには見えない。
無垢に描かれるアダムとイヴの世界より、奈落の底のサタン達の愚かさが健気に見えてしょうがない。

ミルトンが生きたのはシェイクスピアと同年代のイギリス、ロンドン。
清教徒革命に翻弄され、その間に作品の方向性も変わっていったらしいですが、
一筋縄にキリスト教といっても、政治や宗派が絡み合っていた時代。
深く理解するには、まだまだ時間がかかりそうです。ちなみに、失楽園は失明したミルトンが口述した作品。
他の作品として、キリストが地上に生まれてから以降の「復楽園」(楽園の回復とも)、
「闘士サムソン」「言論・出版の自由」などがあります。


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スタジオジブリ絵コンテ全集1 風の谷のナウシカ

2009年09月29日 00:56

『宮崎駿』著 徳間書店 576ページ

誕生日のプレゼントで貰いました!☆
まじ嬉しいっす!!いや、ほんと、まじ嬉しいっす!(二回言った!)

もう、何回DVD見たか分からないナウシカですが、絵コンテは初めて。
原作とはちょっと違っているところとか、言い回しが違うところも少しあったりして。
実際の現場で、絵コンテがどれくらい重要なのかは素人なので分かりませんが、
このクオリティ…一つの漫画として出版できそうです(してるけど)。
新人アニメーターに向けて描かれた用語解説などもあって、
こういう演出の分野などを勉強されてる方には、かなり良本だと思いますよ~。

絵コンテが書かれた横に「内容」を書く欄があって、
宮崎監督がコマの一つ一つに説明書きとセリフを添えています。
例えば…腐海に落ちたアスベルが、地虫(ミノネズミというらしい)に追い詰められるシーン。
「当たるもハッケ、当たらぬもハッケ、ミノネズミ空中殺法!」と説明が付いてて、楽しげ(笑)。

城おじの3人衆が、戦車を乗っ取れば「オジイ戦車」と命名され、
描いてるうちに「ジジイ戦車」に変わってたり…何かと突っ込みどころが多くて楽しい。
これだけ映画を見ていても、知らないことは多々あるもので、
オームの子供を助けるラストの方のシーンで、「あの人は敵じゃないよ、何か叫んでいた…」という少年が、
「ラステルさん!」と叫んだのは、あれが元々はラステルの服の設定だったからなんですって。

ラステルといえば、トルメキアの船が風の谷で墜落した最初の方のシーンで、
ナウシカが「しゃべってはだめ!」とラステルのボタンをはずすところがありますが、
明確にラステルの体に「何を見たか」の答えは書かれてません。

人質としてペジテに向かう朝、ナウシカは少女3人からチコの実をもらいますが、
あのシーンってかなり意味が深いんですね~。感動しました。
これからは映画を見るたびに重みが増しますね。
海から吹く風により、腐海の瘴気から守られている風の谷。その風がやむ…。
オームの怒りは大地の怒り…こういったくだりが、一つ一つ関係しているようで奥が深いです。
ネタバレも自重して、あとは実際に読んでいたきたいところです。

読みながら曲が頭でシンクロしますね(笑)。読むのに4時間はかかってますが、
全く苦痛を感じずに読み終わってました。たしかジブリ美術館で見たラピュタの絵コンテも4時間かかったなぁ。
1秒1秒の単位で作られており、A~Dパーツの4編に分かれています。
パーツの最後に「借金10」とか描かれていて、なんとも緻密な計算に基づいて制作されてます。

はさまれてた小冊子もおかだえみこ女史の興味深い意見が書かれてました。
そこで知りましたが、「新世紀エヴァンゲリオン」庵野秀明氏はアニメーターとして
この頃は巨神兵を描いてたんですね~~。ちょっとした発見です。


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ハムレット

2009年09月27日 19:35

『シェイクスピア』著 福田 恆存 訳 新潮文庫 246ページ

今まで紹介してなかったのが不思議ですね。だいぶ前に読んだのを、再読したので紹介を。

<あらすじ>
デンマーク、エルノシア城。王子ハムレットは鬱々としていた。
父親である先王が死に、その弟クローディアス(ハムレットの叔父)が今は王位につき、
あろうことか先王の妃(ハムレットの母)を、喪も明けぬうちから妻に迎えたのだった。

ハムレットは夜な夜な歩廊に現れる、先王である父親の亡霊に会う。
父親は、現王が自分を暗殺し、その地位を奪ったのだということを語る。
固く復讐を誓ったハムレットは、表面上は狂態を装い、その機会を待つ。

旅の一座が演じる暗殺劇を通して、叔父の犯行を確信したハムレット。
しかし、誤って宰相ポローニアスを殺害してしまう。
ポローニアスの娘であり、ハムレットが愛していたオフィーリアはそれが基で狂死。
ポローニアスの息子、レイアーティーズはハムレットに恨みを抱き、
決闘の席で毒を仕込んだ剣により戦う。その刃にハムレットは倒れるが、
戦いの途中で剣が入れ替わり、レイアーティーズも死に絶える。
-----------------------------------------------------------------------------
四代悲劇では一番有名ですよね~。作品として一番イイのは「リア王」らしいですが。
ハムレットに関しては、非常に解釈も分かれていて、難しい作品であります。

結局のところ、憎むべきは先王を殺したクローディアス王だけなのであり、
宰相ポローニアスはじめ、母親、オフォーリア、レイアーティーズなどは、巻き込まれただけ(悲劇!)。
ハムレットは、父親に「ちゃんと復讐するからな!」と誓うものの、例の有名なセリフ、
「To be, or not to be: that is the question」(生か、死か、それが疑問だ)と、
ちょっと弱気な発言をして、狂態を演じて殺害を先延ばしにしている。
(「生きるべきか、死ぬべきか、それが問題だ」の方が有名ですかね)

ハムレットの感想を読んでいると、「ハムレットは悩みすぎ」という意見が多い。
しかし、復讐のため人を殺すのは、簡単に行えることではない。
ならば自分が死ぬべきか…と苦悩するのは、むしろ当然のことのように思える。
そういう意味で、ハムレットは全く「狂っていない」。こんな腐った世の中でいいのか、
デンマーク王国はどうなってしまうんだ、そういう嘆きを作品中にばら撒いている。

つまり、個人的な悩みだけではない。例えば、愛するオフィーリアへの言葉で有名な、
「Get thee to a nunnery!」(尼寺へ行け!)は、解釈が分かれるところだけど、
私は「あなただけは穢れないように」と、告げているように思える。
狂態を装い、一見何を意味するのか分からない言葉の裏に、ハムレットの誠実さ、愛情が溢れる見事なセリフだ。

要はかなり正義感が強く、「人間らしい」ヒーローだったという事。
ただ、最後には死に向かう覚悟もでき、復讐を遂げる。が、自らも死ぬ。
祖国はノルウェーの手に渡るしと、イイとこ無しのまさに悲劇。

こんな作品だからこそ、「俺、かなり不幸!!」という感じを出すセリフの味は大切。
福田氏はいつも「シェイクスピアは日本語にしたら、その時点で90%の美しさは死んでる」というが、
韻を踏んだり、(狂態に交えて)皮肉をいうハムレットのセリフを、なんと料理していることか。
そりゃ劇団四季でも使用しますわなー。原文知らないけど、よくぞ日本語でここまで…と思います。

今回は巻末にシェイクスピアの執筆年代と、福田氏による「シェイクスピア劇の演出」という考察が載ってました。
(私が持ってるのは改装前ので、表紙に何も絵が書いてないヤツです。今のにも載ってるのかな…?)
福田氏、すごいっす。世間のシェイクスピア論を真に受けず、自分の解釈で、しかも無理がない。
シェイクスピアの解釈なら、この人についていきたいなあ~と思わる説得力をお持ちです。


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「天使」と「悪魔」がよくわかる本

2009年09月24日 23:45

『吉永進一』監修 『造事務所』編著 PHP文庫 317ページ

前回の「世界の神々がよくわかる本」に続いて、今度は「天使と悪魔がよくわかる本」
内容が重複しているところもありますが、僅かなので続けて読んでも大丈夫です。

東洋と西洋で、それぞれ分類して天使と悪魔を紹介しています。
簡単に「天使」と「悪魔」、「東洋」と「西洋」といっても、住み分けは難しい。
そこのところ、どうするのかなぁと思いましたが、結論的には無理やり分けた感があります。
もともとはある民族の神として祭られていたものが、キリスト教が普及したために、
「悪魔」とみなされてしまった…とか。世界中に色々な解釈があるので仕方ないでしょうが…。

代表的な例をあげてみると…
「天使」… ミカエル、ガブリエル、ラファエル、ウリエル、メタトロン、ラジエル 等 (西洋)
       梵天、帝釈天、毘沙門天、阿修羅王、弁財天、哪吒、アプサラス 等 (東洋)

「悪魔」… ルシファー、バール、ベルゼブブ、アスモデウス、リリス 等 (西洋)
       アーリマン、カーリー、イブリース、ラーヴァナ、ティアマト 等 (東洋)

まあ、何とも多種多様な顔ぶれ。ああ、この悪魔はゾロアスター教発祥だったんだ…とか、
意外な発見などもあって、この値段、この容量であれば、満足できる内容かなと思います。
しかし、やっぱり悪魔の方が読んでて楽しいもんですね。天使はお堅いわ~(笑)。

巻末の方には、「聖人」と「魔導師」というのもオマケでついていて、
玄奘三蔵や、ファウストなどの「天使とかかわった人」「悪魔とかかわった人」が紹介されています。

有名な天使や、悪魔はどうしてもエピソードが多いため、
そのすべてを紹介しつくすのは文庫の容量から、当然無理というもの。
知っている人からすれば、「そんなこと当たり前!」という事ばかり出てきて、
物足りない…という内容です。浅く、広く、まさにそんな感じです。

ここの造事務所さんが出してるシリーズは、あくまで「入門書」としてみるべきですね。
イラストもイメージが湧きやすいように…という感じがします(今回も仙田聡さんです)。
ただ、前にも触れたように、コラムは面白い!
『魔法円の描きかた』とか、『「ソロモン王の鍵」にみる惑星天使』など、
ちょっとした豆知識(?)みたいなサービスが嬉しい。
監修の吉永進一さんの趣味が入ってるんでしょうか…。


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アンの友達

2009年09月22日 12:37

『ルーシー・モード・モンゴメリ』著 村岡 花子 訳 新潮文庫 317ページ

その名の通り、アンの物語から少し離れて、アヴォンリーに住む人々の物語。
合計で12のストーリーが展開されていきますが、
アンは名前こそ出るものの、ほとんど登場しません。
これを「アンの物語」とするかは難しいところですが、
訳者の村岡女史は「第四のアン・ブックス」と位置付けているようです。

<あらすじ:抜粋>
・15年間も婚約に踏み切れずにいたルドヴィックが、ついにプロポーズに踏み切った訳は…
                                             (奮い立ったルドヴィック)
・昔、愛した男の忘れ形見の子供を、陰ながら支え、最後には周りの人々の心まで変えてしまう物語…
                                             (ロイド老淑女)
・子供を思う余り、禁じていたヴァイオリン。その少年が、ある臨終の席に立った時に奏でた曲は…
                                             (めいめい自分の言葉で)
・ある喧嘩をきっかけに、婚約していた二人は15年間口をきかなかった。長い維持の張り合いの末…
                                             (ルシンダついに語る)

年齢を問わず、恋の話から、親子愛、夫婦愛などなど。
モンゴメリは長編作家ですが、短編に関してもこんなにイイ作品を書けるのかと驚き。
むしろ、気持ちのいい引き取り方なんかは、もともと短編専門じゃないの!?と思えるほど。

本編で少しだけ話題に出たことが、こうしてサイドストーリーとして細かく設定されているのは、
ファンとすれば本編を再度読む時に、ニヤリ…と思えて楽しいでしょうね~。
実際に出版された順番としては、「赤毛のアン」「アンの青春」「アンの友達」「アンの愛情」と続きます。

夢想家で、ユニークなセリフが多い本来のアン・シリーズもいいですが、
こういう個性派ぞろいの心温まるアヴォンリーの住民たちも、愛すべき存在ですね。
作者自身もかなり、お気に入りの物語たちだったみたいです。

ところで、話は飛びますが…「アンの友達」というカフェが栃木県宇都宮市にあるらしいですね。
外装が、アンの家であるグリーンゲイブルズに似ていて、とても素敵です。
うーん…栃木か…遠いなぁ~。


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リチャード三世

2009年09月16日 23:08

『シェイクスピア』著 福田 恆存 訳 新潮文庫 202ページ

15世紀イングランドを舞台として、繰り広げられる政権争い。
シェイクスピアはエリザベス女王時代の人間だから、今でいえば、
今の日本人が時代劇を見ているようなもの。

シェイクスピアには前にも紹介したように、「○○時代」という作品の流れがあるのですが、
このリチャード三世に関しては、初期の方の作品で、時代でいえば「習作時代」。分類は「史劇」。
物語は薔薇戦争を題材にして、リチャード三世の兄、エドワードが国王に就いた後からスタートする。

<あらすじ>
せむし、びっこのグロスター公(リチャード三世)は、国王が病死するに合わせて、実兄を暗殺する。
本来であれば国王の息子である王子たちが得るはずだった権利を、
陰謀と暗殺を繰り返すことによって、ついに王権を手に入れる。

しかし、何物をも信じられなくなっているリチャード三世に臣下が付いてくるはずもなく、
ボズワースの戦いで、自らが手にかけた人々の亡霊に呪われながら死んでいくのだった。
-----------------------------------------------------------------------------
シェイクスピアでは、かなり悪者として描かれている。
身体的にハンディを背負っている負い目から、悪の権化となった…という、
「劣等感からくる悪」という俗っぽいものではなく、「悪」そのものを美しくさえ見せる、
奸智に長けた人物像を見事に描いている。習作時代でここまでのを描けるのは、やはり天才。
専門家によれば、後期の作品群に比べると、言い回しや構成などは劣るらしいけれど。

ここでも、福田さんの解題を一部紹介。
「リチャード三世」では、実に多くの人が死ぬ。
シェイクスピアの悲劇はもともとたくさんの人が死んでいくけど(ハムレットでは8人)、
この作品では、それが一つの「復讐」という繋がりを持っている。ヘンリー六世から王権を奪ったヨーク家。
そして、その弟が兄の王権を奪い…そして、さらにリッチモンドが…と、「復讐が復讐を呼ぶ」。
「リチャード三世はこんな悪いヤツだった」という物語ではなく、そこにあるのは「逆らえない運命の流れ」、
ということらしい…なるほど。この解説を読んでから、本篇を読めば良かった。さすが福田さん。

この作品の前に、「ヘンリー六世」(1~3部)が書かれている。
ようは薔薇戦争でヨーク家がランカスター家に勝利する時の話なので、
ちょうどリチャード三世の物語の前段階にあたる。個別でも楽しめるけれど、流れとして読むのもいいかも。

ちなみに実在のリチャード三世は、ここまで悪い人ではなかったようですね。
テレビでみるのと違って、水戸黄門は本当は筋肉隆々だった…というのに似て、
リチャード三世もイメージの固定化を図られた、可哀そうな人なのかもしれません。


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失楽園(上)

2009年09月15日 00:54

『ミルトン』著 平井 正穂 訳 岩波文庫 443ページ

キリスト教三大文学、最後になりましたが「失楽園」をやっとこさ紹介です。
アダムとイヴが、楽園追放を受けるまでの裏話…といえば分かりやすいでしょうか。
いわゆる聖書の「外伝」みたいになってまして、上巻の主役格は堕天使となったサタン
長編の叙事詩という形式で、上巻には1~6巻の内容が入っています。
以下、失礼を承知で砕けまくったあらすじを紹介します。

<一巻>
天上で神様に叛逆して見事に負けたサタンは、地獄で目を覚ます。
メタメタにやられてる天使たちを鼓舞して、もう一度神と対峙しようぜ!と呼びかける。
堕天使たちはそれに答えて、パンデモニウム(万魔殿)を建設し、軍事会議を開くことに。

<二巻>
会議では「全面戦争だ!」とか、「いや、どうせ勝てないし、このまま暮らそーぜ」とか
色々な意見が飛び交うけれど、結局は今度新しく作られる世界(地球)で、
人間という生き物が作られるらしいから、そいつを悪(悪魔の側)に引き込んでやろう!
そして神に嫌がらせしてやろうぜ!という事に相談は決まる(この時点で少し笑える)。
誰が遥か地上までその任務を果たしに行くかという人選には、サタン自らが名乗り出る。

<三巻>
神様は「サタンが人間を堕落させる」と予見する。でも、「自分は人間を完全無垢に作ったし、
堕落するのは人間の自由だから、やれることやったし、後は知らん」と意外に淡白。
そこで神の御子(キリスト)が「自分が死んで償いますから」と申し出る。
キリストが十字架にかけられるのは、ここらへんの裏話があるんですね~。
一方サタンは、宇宙までやってきて、そこにいた大天使ウリエルに「人間はどこに?」と訊ねるため、
勉強熱心な天使に変装して、その居所を聞き出す(そんな簡単に騙されていいのか、大天使!)。
どうも神様以外は、「偽善」を見破れないらしい。天使は疑う心が無いからか。

<四巻>
エデンに来たサタン。アダムとイヴのあまりの美しさに「チクショー羨ましい!むかつくー!」と大激怒。
ウリエルはその形相を見て「あいつは堕天使だ!」と気が付き(遅い)、すぐ警備のガブリエルに報告する。
ガブリエルは二人の天使を派遣する。眠っているイヴの横で、ガマに変身し、その耳に
幻想を吹き込んでいたサタンを天使たちは見つける。槍でガマをつつくと、
「やべ!見つかった!」とばかりにサタンはびっくり(ここ、笑うとこでしょう)。連行されてしまう。
あわやガブリエルとサタンが一戦…というところまでくるが、天秤座が「戦わない」方に
重きを置いていたので、サタンは逃げ出す。

<五巻>
神はラファエルに、アダムとイヴに「サタンに気をつけろ」と忠告してくるよう命じる。
ラファエルは二人に、サタンがどんなに悪い奴かを語って聞かせる。
それは、天上にてサタンが神に叛逆して大戦火を巻き起こした物語だった。

<六巻>
引き続き、サタン軍vs神軍の戦争が語られる。サタンはミカエルと一騎打ちしたとき、
ぐさっと脇腹をやられ、「転々ところげ廻った」らしいです。相当痛かったんでしょう。
サタンは大砲を発明して一旦は優勢を見せるが、天使たちは山を根こそぎ投げつけたりと、
かなり無茶苦茶な攻撃をしてくる。三日目にキリストが出てきて、サタン軍は雷でボコボコにされる。
そうしてサタン軍は地獄へ落ちたのだ…というところまでラファエルは話し、サタンに気をつけろと諭す。
-----------------------------------------------------------------------------
聖書の内容やギリシア神話など、かなりたくさん出てきます。
キリスト教は唯一神ですが、そういう古典も融合しているんですね。
でも、基本はやはり「神」と「キリスト」を誉めたたえてるので、ミルトンが熱心な信者であったのは間違いない。
神がサタンが叛逆するのを止めなかったのも、サタンによってそそのかされた者が、
後になって改心すると、悔しいのはサタン自身でしょ?と余裕そのもの。全知全能なのです。

平井氏の訳に関しては定評が高く、私自身もかなりイイと感じました。
詩句の美しさは格調高く、それに加えて難しすぎずに楽しんで読める。
注目すべきは注釈。実に100ページ以上に及び、文献は広範囲に用いていらっしゃいます。
文学科でミルトンを研究する人なら、こんなありがたい本はないでしょう。
元が難しい叙事詩なだけに、その威厳を損なうことなく見事に現代語へ訳した平井氏に素直に感動!

下巻においては、アダムとイヴがついにサタンの手に落ち、楽園を追放されます。続きが楽しみですね~。


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オセロー

2009年09月10日 23:01

『シェイクスピア』著 福田 恆存 訳 新潮文庫 214ページ

いわずと知れたシェイクスピアの四大悲劇の一つ、オセロー。
オセロゲームの名前の由来になった作品ですね~。
黒人のオセローと、白人の妻デズデモーナの物語が、二転三転するからなんだとか。

<あらすじ>
数々の武勲を立ててきたムーア人のオセローは、美しく貞淑なデズデモーナを妻をして迎えた。
しかし、彼を憎む旗手のイアーゴーは、奸策を用いて仲を引き裂こうと試みる。

オセローの副官を務めるキャシオーを罠にかけ、免職にさせてしまうと、
復職を望むなら、オセローの妻に取りなしをお願いするのが良いと、アドバイスするイアーゴー。
そしてオセローには、「奥様とキャシオーがデキている」とそそのかす。
猜疑心に囚われたオセローは、妻が必死にキャシオーを庇うのを訝しく思い始める。

さらに一計を用いたイアーゴーは、オセローが妻に送ったハンカチーフを、
キャシオーにあげてしまったのだと思わせることに成功する。
高潔な人物だったオセローは嫉妬に狂い、デズデモーナを絞め殺す。
そして、すべて罠であったことが判明すると、悲しみのあまり自殺をするのだった。
-----------------------------------------------------------------------------
ムーア人という位置づけがポイントになってるんですが、ムーア人といっても広範囲で、
もともとは北アフリカにすんでいた人種で、主に黒人のことを指していたようです。

人種差別とかそういうのではなく、「気性が荒い」とか、「真っ正直」とかいう性格的な部分で、
この作品では扱われているんですが、どうも読んでるとオセローの浅はかさが目につく。
いや、だって、すごい奥さんを愛してたんでしょ?いくら「正直」でも簡単に騙されすぎだなぁ…と。

相変わらず翻訳者の福田さんは良い仕事をされてて、解題がすごいこと、すごいこと。
オセローは個人的な嫉妬の物語であって、リア王マクベスなどに比べて、
スケールが小さいのだとか。悲劇の主人公らしくなく、イアーゴーに振り回されっぱなし。
リア王なんか、始終「俺はなんて不幸なんだー!」と独白しっぱなしだけど、
オセローには最後に詩的なセリフがあるくらいで、その「悲劇の主人公らしい悲痛な叫び」が無いんだとか。
シェイクスピアは限りなく解釈論が出てるけど、福田さんの解題は無理がなくて
いつも納得がいく。ちょっと「自分、シェイクスピア語れるかも…」とかいう生意気な気もしてくる。

逆にイアーゴーは「悪者らしい」いい味を出してる。
上手い具合に策略の手配が終わり、オセローを罠にはめる前のセリフ、
「やっとお身籠りあそばしたぞ。あとは地獄と闇夜の手を借りて、
 この化け物に日の目をみせてやるばかりだ」
なんてのは、私も結構気に入ってたりします(もともと悪役が好きなので…笑)。
ただ、あくまでもイアーゴーのセリフは脇役にすぎず、ひょうきんな俗っぽさが抜けない。

だから、現代人には楽しくすらすら読める代わりに、詩的美しさが、やや欠ける作品になってます。
私も、「なんかあっという間に読み終わってたな…」という印象。二回目というのものありますが…。
シェイクスピアの例によって、もとはツィンツィオの「百物語」に原作があるのですが、
イアーゴーの悪役っぷりがさらに輪をかけられて、劇作向きになってるようです。
シェイクスピアは、こういう超悪いやつを登場させるの大好きですねー。


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ファウスト 第二部

2009年09月07日 23:54

『ゲーテ』著 池内 紀 訳 集英社文庫ヘリテージシリーズ 493ページ

第一部から相当レベルが変わって、展開される第二部。
やっぱり、というかさすがゲーテ。難しいっ!
59歳に第一部が刊行、第二部に本格的に取り組んだのが76歳。
第二部の完成が死の直前だったことを考えたら、まさに人生をかけて描いた作品ですね。

<第二部あらすじ>
愛するグレートヒェンが死んだあと、「気持ちのいい高み」で目を覚まし、自責の念から立ち直るファウスト。
第一部では「愛」について経験したが、「時よとどまれ」とメフィストに言わしめることはできなかった。
第二部では皇帝が財政難に悩み、メフィストとファウストによる、新しい資金調達の手法が取り入れられる。
さらに皇帝はファウストに絶世の美女ヘレナ(トロイア戦争のきっかけとなったスパルタの王妃)を所望する。
この世に召喚したヘレナに心を奪われた(またか!)ファウスト、二人の間にできた子供オイフォリオン。
時間と場面は目まぐるしく入れ替わり、神話の神々、妖怪のオンパレード。

ここらへんが、原文とかで読むと「何が何だか分からない」罠に陥る難しい場面なんだとか。
火と水の原理、命を求める人造人間ホムンクルスなど、ゲーテさんの次元が違う思考が伺えます。

最後には、海辺の干拓事業に携わるファウストが、自分の墓穴を掘る音を
干拓作業の音だと勘違いし、感動して「時よ、どとまれ」と言ってしまう。
メフィストは約束通り魂をいただこうとするが、天使と「かってグレートヒェンと呼ばれた女」によって、
ファウストの魂は救われるのだった。
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翻訳者の池内氏曰く、
「ある程度の才気と、そして熟達した詩の技巧があれば、第一部は誰にでも書ける。
 しかし、第二部はひとりゲーテにしか書けなかった」
「第一部が「人間つまり小宇宙」の悲劇とすると、第二部は「世界つまり大宇宙」をめぐるドラマである」
と、これぐらい違うんだとか。

一般人には、第一部は「流れがあって読みやすい」、第二部は「場面があちこち入れ替わってややこしい」
という簡単な認識しかないけれど。池内訳はかなり簡単に書いてくれてるので、流れがつかみやすい。
では、具体的にどう高度なのか、そこのところを突っ込まれると、これが非常に難しい。
技巧もそうなんだろうけど、日本語でどこまで分かるものなのか…。
だた、愛する者のため…という個人的なスケールから、国家の財務局長などを経験した
ゲーテが考える金銭、権力、名誉などに対する哲学の重さは随分と変化してる。

ギリシア神話もふんだんに用いられていて、個人的に好きなのは「イカロスの墜落」を模した、
ファウストの子供、オイフォリオンが死ぬ場面。ブリューゲルの絵を思い出しますね~。
リンク先は「サルヴァスタイル美術館」様より勝手に拝借させて頂きました。かなりステキサイト様ですッ!

なんだか、訳の分からない紹介になってしまった。いつもながら反省…。
でも、ゲーテ!うわ、重そう!なんてことは全然ないですよ。
本人も気さくな人だったし(←何様)!こんな私でも楽しんで読みましたから。


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