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ドグラ・マグラ 下

2009年07月31日 21:13

『夢野久作』著 角川文庫 382ページ

「これを書くために生きてきた」
10年あまりの推敲を重ねて完成されてた本作。
これを読まずしては夢野久作を語れないであろう集大成。

今年2009年の「角川文庫 夏の100冊」にも入ってますね。
上巻を読んで、しばらく時間が空いてたので、内容忘れてました…イケナイ…。
読むなら一気に読んだ方がいいかも。話がヤヤコシイので、忘れます。
上巻参照→http://hihidx.blog115.fc2.com/blog-entry-267.html

んー…正直に申しますと、宣伝文句ほどの奇書でもなかったように思います。
この作品の主眼になっている「心理遺伝」の内容は、たしかにユニークで、
「常人には考えられない」と言われれば、そうかもしれません。

一つ一つの細胞には、それぞれに記憶があり、
そして先祖から受け継がれてきているのだ。
人間が意識がないのに夢遊をしたりするのは、これが原因。
つまり、現代通説になっているようなのとは違い、脳髄はものを考えるところに非ず。

主人公を材料にした、二人の博士の化学実験、代々、男を狂人へと変えてしまう絵巻物の謎、
推理小説と云えばそうかもしれないけれど、到底そのカテゴライズで収まるものではない。
記憶喪失の主人公が、自分が誰か分かったときに、すべてが解決するものだと思っていたら、
「ん?なんだかよく分からんうちに終わってしまったぞ…」というような気持ち悪い感じ。

分かったようで、分からない。
表紙の異様さや、各方面の称賛の言葉を、まともに受けて読んだら、
違う印象を受けることになるでしょう。ただただ、異様。それにつきるのみ。
この内容で、ここまでひっぱる必要もなかったのではないかな、と。

読みにくさが最大の難点。
「晨(アシタ)に金光を鏤(チリバ)めし満目の雪、
 夕には濁水と化して河海に落滅す」
こういった参考文献的部分に関して、いやぁ骨の折れること。
さらーっとなら読めるけど、頭に入れないことには真相が分からない…難儀なことで。

根気よく、じっくりと、そして内容を忘れないように(笑)、
夢野久作ワールドに浸るのも楽じゃありません。
彼の作品を読む時、最初の一発目に「ドグラ・マグラ」はキツイです。
「人間腸詰」など、いかがでしょうか。
参考→http://hihidx.blog115.fc2.com/blog-entry-253.html


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魔女の宅急便 その4 キキの恋

2009年07月29日 00:09

『角野栄子』著 佐竹 美保 画 福音館書店 283ページ

タイトルからして、キキもずいぶん大人になったもんだなぁと(保護者の目)。
宮崎駿監督のスタジオジブリ作品では、純粋な恋愛モノは「ハウルの動く城」
初めてだったそうですが、「魔女の宅急便」のキキとトンボさんの恋は、
なるほど、こういう風に展開されていくんですね…ウフフ。

ちなみに現在、大阪のサントリーミュージアム【天保山】で、
『スタジオジブリ・レイアウト展』が開催されています。
さっそく見に行かなくっちゃ!!
サントリーミュージアムHP→http://www.suntory.co.jp/culture/smt/gallery/index.html
           公式HP→http://www.ytv.co.jp/event/layout/

1~3巻の参照はカテゴリー「児童書」より。

<あらすじ>
トンボさんがほかの街の学校に行ってしまって、数ヶ月経ちました。
やっと待ちに待った夏休みで、一緒に遊べるのを楽しみにしていたキキ。
ところが、トンボさんは休みの間、山にこもると言い出したのです。
せっかく楽しみにしていたのに…と残念がるキキ。

魔女であることの自分、トンボさんを好きになった自分、それは自分で選んだ道。
それを、宅急便の仕事でお客さんから教えて教えてもらうキキ。
そして、トンボさんとのことも、自分だけの視点から見ずに理解を示し始める。
-----------------------------------------------------------------------------
元気いっぱいなキキから、切ない物語も入った大人のキキへのストーリー。
余談ですが、おソノさんの旦那さん(グーチョキパン店のオーナー)の名前は、
フクオさんらしいです。トンボさんの名前の由来は「トンボメガネ」をかけているから。
若干マニアックなプチ情報でした(笑)。


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アクシデント 下

2009年07月24日 22:09

『ダニエル・スティール』著 天馬 龍行 訳 アカデミー出版 334ページ

意識不明の状態が続いたまま、娘のアリソンは昏々と眠り続けていた。

上巻の内容はコチラ→http://hihidx.blog115.fc2.com/blog-entry-328.html
以下、内容の重要部分を含みます。

アクシデントは引き続き起っていた。
息子のアンディーはジャングルジムから落ちて腕を骨折し、
自分の母親と姉は、見舞いに来るという名目のもと、旅行をしにくる。

なかでも最悪なのが、夫の浮気が発覚したことだった。
16年という長い歳月で、彼女が夫の浮気に気がついたことは一度もなかった。
よりによって、この一番悪いタイミングで、夫婦の絆は崩壊してしまった。

次から次へ降ってくる不幸。
それでも前を見据えて生きていくペイジが健気だ。
そして人生は不幸だけではないと最後には教えてくれる。
この経験をしたからこそ、生まれるものもあるのだ。
パンドラの箱を開けてしまったとしても、最後に希望は残る。

ペイジの再出発は、このアクシデントを乗り越えて始まっていく。

…どちらかと言うと、冒険とかわくわくするストーリーが好きな私には、
この、あまりにも不幸すぎる話が正直好きとは言えません。
しかし、不思議に読み出したら止まらない。

細やかな文章も、ああ、女性らしいな…という感じ。
娘の変わり果てた姿に恐れおののく感情や、
逆に愛らしい子供の姿など、とても丁寧な描写です。

世の中、現実は厳しいけれど、決して悪いことだけじゃないよ…、
そんな諭すような、新しい一歩を踏み出す勇気をくれる作品です。


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アクシデント 上

2009年07月23日 22:50

『ダニエル・スティール』著 天馬 龍行 訳 アカデミー出版 301ページ

アクシデント【accident】
不意の出来事。思わぬ故障。事故。 (Yahoo辞書より)

ほんの一瞬の間に、人生はガラリと変わってしまう可能性がある。

ペイジは二人のかわいい子供に恵まれていた。
姉のアリソンは、つぼみが膨らみ始めたような美しい少女だ。
弟のアンディーは、未熟児として生まれたが今では立派に成長して、素直で優しい少年になった。
そして夫のブラッドはハンサムで仕事のできる男だった。

ペイジは結婚してからの16年間と、これからの未来が幸福であると信じていた。
しかし、その幸せな家庭に突如としてアクシデントはやってきたのだ。

娘のアリソンはその日、門限の時刻を過ぎても帰ってこなかった。
ペイジは腹を立てて帰りを待っていたが、母親の当然の気持ちとして次第に不安が襲ってきた。
そんな時、一本の電話がけたたましく鳴り響いた…。

彼女の不安は的中した。娘のアリソンと、親友のクロエ、
そし二人のボーイフレンドを乗せた車が、対向車と正面衝突したというのだ。
ペイジは病院へ駆けつけた。クロエの父親のトライブも同様にやってきた。
こんな時に、夫のブラッドは運悪く出張へ出かけてしまっており、連絡がつかない。

二人の親にとって長い夜になった。
クロエは下半身に後遺症の残るケガを負い、アリソンは脳の手術を受け意識不明だった。
幸せな家庭は一変した。若い少女たちの長い人生に、考えられない負担が待ち受けているのだ。
アリソンについては、今後一生、植物状態が続く可能性も大きかった…。

ストーリーは単純なものの、重くのしかかる作品。
母親は強い。どんなことがあろうと現実を見て、逃げ出さない。
“親の愛は無償である”という言葉が何度も思い起こされる。
リハビリや後遺症による弊害などを考えると、絶望的な気持ちになる。
しかし、どんな不幸が襲ってきても、希望を捨てないペイジの姿は、
まさに母親の愛であり、忍耐だ。これは母親でないと書けない作品だと思います。

もしかしたら、明日は我が身に起りえるアクシデント。
その悲劇に遭遇した家族たちの物語です。


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巌窟王

2009年07月20日 17:58

『アレクサンドル・デュマ』著 矢野 徹 訳 講談社青い鳥文庫 353ページ

本って、少し読んだだけで、その作家が自分の好みかどうか分かりますよね。
デュマはまさにそれ。もしかして、私はフランスとロシア作家に惹かれる傾向に
あるのかしら…。皆さんそういう傾向ってありますか?

原題「モンテ=クリスト伯」。周知のように、あの長ーい作品です。
岩波文庫のシリーズを、古本で見つけたら買ってますが、
なかなか全巻揃わずに、中途半端な巻数しかありません。
いつか山内訳でも本腰入れて読んでみたいです。

無実の罪を着せられ、婚約者も奪われてしまったダンテス。
彼が囚人としてやってきたのは、悪魔島の地下牢…。
14年間の牢獄生活の中で、ダンテスは自分を裏切った人間に復讐を誓うのだった。

地下牢から脱獄したダンテスは、モンテ=クリスト島に隠された財宝を手に入れ、
「モンテ=クリスト伯爵」名乗り、さっそうとパリに現れた。
その完璧な身のこなし、優雅な態度、豊富な知識に敬慕しない者はいなかった。
こうして別人として生まれ変わったダンテスは、冷徹に復讐を遂行していく…。

勧善懲悪のスタイルは王道ですが、やはり面白いですね。
水戸黄門のTVを見てるようなスカっとする感じです。
353ページという短い中に、この作品すべてを収めるのは到底無理なこと。
基本的な話の流れだけ知りたい人には、これくらいがお勧めです。

同じ長編でも、「ダルタニャン物語」とはまた違った面白さですね。
この作品で、デュマの大ファンになってしまう人がいる…というのは頷けます。


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名犬ラッシー

2009年07月14日 22:33

『エリック=ナイト』著 飯島 淳秀 訳 講談社青い鳥文庫 347ページ

日本ではテレビドラマでその名を一躍有名にした「ラッシー」。
子供たちはアニメを心待ちにし、映画になった本数も数知れず。
特に有名なエリザベス・テイラー主演の「ラッシー・カム・ホーム」は、
以後のラッシーブームに火をつける事になった作品。

この一匹の犬の名前を知らない人は(子供は除くとして)そうそういないだろう。
頭のいい犬の代名詞としてコリーは人気を呼び、このブームに乗って、
コリー犬を飼う家庭が、一時期かなり多かったのは周知の事実だ。
それほどまでに愛された「名犬ラッシー」。子供向けの青い鳥文庫ですが、充分感動しました。

村で評判のラッシーは、毎日決まった時刻に主人のジョーを学校へ迎えに行っていた。
どんな日だろうと、それは全く変わらなかった。頭がいいだけではなく、とても美しいメス犬だった。
ジョーの父親は鉱山で工夫をしていたが、不況のあおりを受け仕事が無かった。
やむなく両親は、ラッシーを犬好きのラドリング公爵に売ってしまう。
少年と犬の平和な日々は終わってしまったのだ。

犬はヨークシャーから、北のスコットランドまで連れて行かれてしまう。
しかし、遠く離れた故郷からラッシーを呼び戻すものがあった。
「…時間だ!…少年を迎えに行く時間だ!」

自然の地形に阻まれ、どれほど叩きのめされても、本能がラッシーを家へ導き続けた。
人に飼われていた時は、なんとも美しく気品に満ちていた犬が、今や薄汚れて痩せこけていた。
行く手を阻むのは、自然でもあったが人間でもあった。
しかし、ラッシーは400マイルという道のりを少年のもとへ帰っていく。

本来はラッシーの忠実さ、頭のよさがこの作品の主眼になるのだろうけれど、少し違う視点で見れば、この作品はより面白い。
作者の生きた時代は、第一次世界大戦後の不況にあえいだ時代だった。
ジョーの両親が貧乏のためにラッシーを売ってしまったことや、死にそうなラッシーを助ける老夫婦が、
自分たちの石炭を買うお金もないのにミルクを飲ませてやること、旅の途中に戦った浮浪者…。
作品のいたるところに不況の影が見える。

人々の心がすさんでいた時代に、ラッシーを通して人間の愚かさ、優しさが色々見えてくる。
この話は、犬の物語であると同時に、人の物語でもあるのだ。
エリック=ナイトが生涯に残した作品の中で、この「名犬ラッシー」は唯一の児童向け作品。
純粋に犬の忠実さに涙する作品として、児童向けには間違いないが、
こういう背景があるとして、大人の見方もまた一つだと感じます。


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魔女の宅急便 その3 キキともうひとりの魔女

2009年07月10日 12:18

『角野栄子』著 佐竹 美保 画 福音館書店 321ページ

16歳になったキキ。
コリコの街での生活は、お届けもの屋さんの仕事に
新しく、くしゃみの薬作りも加わって忙しい毎日を送っていました。
この街に自分が必要なんだということが感じられて、
少しずつ自信もついてきた矢先に、闖入者が現れます。

1巻→http://hihidx.blog115.fc2.com/blog-entry-310.html
2巻→http://hihidx.blog115.fc2.com/blog-entry-313.html

<あらすじ>
古いしきたりでは、ひとつの街に住む魔女は一人…ということに決まっています。
突然コリコの街にやってきた年下の魔女ケケ。
キキの代わりに勝手に頼まれごとをやってのけたり、
「飛行クラブ」のメンバーとも、いつのまにか仲良くなっていたり。

自分の居場所を横取りされたみたいで、なんだか不機嫌がちなキキ。
イライラがつい邪険な態度に出てしまい、ジジもあきれ顔。

そんな時、「おわりのとびら」という不思議な本を預かるという依頼を受ける事に。
お届けもの屋さんのお仕事なのに、本はキキが預かったきり、誰からも音沙汰がありません。
その本は、開けるごとに何か不思議な言葉を読む人に送ってくれるようなのですが…。
-----------------------------------------------------------------------------
毎回、挿絵のイラストーレーターが変わっていますが、
今回の佐竹さんは一番好みでした。少し大人になったキキが可愛い…。
原作「魔法使いハウルと火の悪魔」の表紙を描かれてる方です。
ここまでくると、もうアニメの方とはまったく違ったストーリーですね。

自分の居場所がなくなっちゃうような、よく考えるとバカバカしいような…、
難しく云うとアイデンティティの確立のようなストーリー。
とんぼさんは、技術学校に行ってしまうので、今後は少しさびしくなりそうです。
キキの恋の行方はどこにいくのでしょうか。


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グラント船長の子供たち 下

2009年07月09日 13:36

『ジュール・ヴェルヌ』著 大久保 和郎 訳 ブッキング 342ページ

グレナヴァン卿一行のグラント船長捜索隊は、南米での失敗を見た。
船長が南緯37度で遭難したことは疑いようのない事実だ。
では、どこで?南米パタゴニアの横断では、遭難者たちの消息はおろか、
海岸線でもブリタニアが難破したという情報は、全くなかったのだ!

上巻はこちら→http://hihidx.blog115.fc2.com/blog-entry-318.html
以下、内容の重要部分を含みます。

南緯37度は、この地球上でどれだけの陸地を横断しているのか。
南米を除くとすれば、大西洋のトリスタンダクーニャ島、喜望峰の2度下、インド洋のアムステルダム島、
そしてオーストラリアへぶち当たり、その向こうにはニュージランドが控えている。

その頭の中の世界地図を順繰りに追っていったとき、地理学者パガネルは叫びをあげた。
遭難者たちが海に放った手紙の一部分は「オーストラリア」と解釈することも可能ではないか!?
再び希望を抱いた一行は、すぐさま舳先をオーストラリアへ向けて出発した!

ヴェルヌの深遠なる知識を披露するのに、これほどうってつけの大陸は無いように思える。
彼の手によると、地理学、植物学、鉱物学の何と色づくことか。
ユーカリは何故木陰を作らないのか、産金国は恵まれていないとパガネルが言い切る訳は?
「何よりも国というに値するのは、いいかね、それは鉄を産する国なんだ!」
もう、パガネル先生のセリフはいちいちカッコいいです。たまらん!!

一度ならず、彼らがあれほど燃えていた捜索の意志は、灰に帰した。
どんな自然の脅威にも立ち向かっていく勇敢な人々だったが、
最後には、人間の邪悪さがついに彼らをくじかせたのだった。

はたして、グラント船長の子供たちは、父親に再会できるのか…。

ヴェルヌの作品は、基本的にどれも淡々としているのですが、
そこが余計に想像を掻き立てるのでしょうか、思わずウルッと来てしまう感動場面も何度か…。
勇気、愛情、希望、人間の美徳をこれほどまで美化せずに書きあげることができるなんて。
すばらしいです。本当に読んで良かった。

これで「グラント船長の子供たち」、「海底二万マイル」、「神秘の島」三部作は終わりです。
三作品の関係は、正直密接には結び付いてないのですが、「グラント船長の子供たち」の
囚人のエアトンが「神秘の島」で主人公サイラス技師たちの仲間になったり、
「海底二万マイル」のネモ船長の正体が「神秘の島」で明らかになたり…と、
微妙に関連性があったりします。基本的にはどれも独立した作品と考えていいでしょう。
各作品の詳細は、カテゴリー「ジュール・ヴェルヌ」を参照してください。

どれも面白かったので、甲乙つけがたいです。
この本たちは、私の宝物として将来にわたり本棚を飾ることでしょう!


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敵意 下

2009年07月07日 19:13

『ダニエル・スティール』著 天馬 龍行 訳 アカデミー出版 323ページ

無事に社会復帰を果たし、弁護士事務所で働くことになったグレース。
男性不信だった彼女の前に、ついに心を許せる男性が現れた。

上巻の内容はこちら → http://hihidx.blog115.fc2.com/blog-entry-322.html
以下、内容の重要部分を含みます。

チャールズは誠心誠意、グレースをいたわった。
ついに彼女が過去の出来事を話した時も、彼女を信じ、憐れんだ。

二人は結婚した。子供も生まれた。
そのうち、人望が厚く、カリスマ性を持っていたチャールズは、
下院議員をやってみないかという誘いを受ける。グレースはもちろん賛成した。

チャールズの政治生活は申し分なかった。
グレースはその間に子供を虐待から救う救済団体活動を設立し、二人は忙しい毎日を送っていた。

絵にかいたような二人だったため、当然のことながら今度は上院議員の話が持ち出された。
チャールズの支持率は次第に向上し、何もかもがうまくいっているように見えた…。

急転する人生。彼女が忘れかけていた悪夢がその時よみがえった。
父親の殺害、刑務所での生活、モデルエージェンシー時代のスキャンダル。
すべての彼女の過去は暴かれた。それらは極上のフルコースのように、
マスコミの前に並べたてられたのだった…!

私がいつも残念だと思うのは、ダニエル・スティールの作品は、
ハッピーエンドがないということ。これだけ苦労した女性が、
最後の最後くらい、幸せに終わってくれたらいいのに…と考えてしまう。
勧善懲悪ではなく、「人生はこんなもの」というような不完全燃焼で終わってしまう。
先が予想できるようなストーリーだと思っていたら、肩すかしをくらったような感じだ。

現実を踏まえたような結末は、男性作家と女性作家の違いなのかもしれない。
それを不満に感じてしまうようなら、私はまだまだ子供だということでしょうか。


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敵意 上

2009年07月06日 01:11

『ダニエル・スティール』著 天馬 龍行 訳 アカデミー出版 294ページ

単行本をどんどん読んで、本棚の未読スペースを広げよう作戦(笑)。
「無言の名誉」に続いて、またまたダニエル・スティール。

相変わらず、不幸の塊みたいな女性の物語。
13歳から、父親に性的虐待を受けてきたグレース。
父親は世間でも評判の好人物で、弁護士として人の役に立っていた。
半面、家庭では母親に殴る蹴るの暴行を加える二重人格者だった。

そのうち母親はガンで病に倒れ、欲求不満に陥った父。
母親は、自分の代償として娘に父の相手になるように説得し、
グレースはそれが母親のためになるならと考え、それに応じた。

4年間の闘病生活ののち、母親は遂にあの世へ旅立った。
葬儀が終わった夜、父親はいつものようにグレースに体を求めてきた。
しかし、母親のためにと思っていた理由も、今ではなくなっていた。
グレースは抵抗した。そして、いつのまにか手にしていた拳銃で父親を撃ち殺していた。

女性作家の書く、性的虐待の話は、生半可じゃないですよね。
こういう悲しい出来事に対する、作家の想いが感じられます。

彼女の正当防衛の主張は通らず、実刑が下された。
刑務所に入れられたグレースは、囚人として2年間を過ごしたあと、
その後はさらに2年の保護観察期間を経て、自由の身となる。
もともと頭の良かった彼女は、事務の仕事も見つかり、順調に社会へ復帰していった。

しかし、彼女の負った傷は深く、そう簡単に癒えるものではなかった。
罪の償いとして、女子供の救済団体へ参加。
極度の男性不信。20代の女性が歩む青春とはほど遠い生活だった…。

あいかわらずの、重い作品。
早く主人公には幸せになってもらいたいものです…。


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