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千夜一夜物語7

2008年12月31日 00:30

『リチャード・F・バートン』版 大場 正史 訳 ちくま文庫 632ページ

全11巻中、7巻目にしてやっとこさシンドバッドの物語が!
537話~645話までを収録。今回は面白い話が沢山集められていて、ザクザク読めました。

シンドバッドは絵本では随分話が省略されているなと思いました。
細かいところまで楽しむならやっぱり小説が一番。27年間で7回の航海をし、
巨大な魚、ロック鳥、巨人…と心躍る冒険が続きますが、生きるために人殺しや
追剥なんかも結構平気でやってたりするので、ここは所謂「子どもに聞かせられない」部分。

シンドバッドも面白かったんですが、今回もっと笑えたのが「女の手管と恨み」という話。
「これから7日間というもの、口をつづんで一言も発してはなりません。
 例え父親があなたを殺そうとしても。それを乗り越えた暁には、残りの人生を高御座で過ごせます」
ある国の王子はこう宣告され、その通り一言もしゃべらずにおりました。
父王はひどく心配し、訝しがり、王子を後宮へやって心の憂さを晴らさせようとしました。

さて、後宮には父王の寵姫が一人おりましたが、その上臈は王子を一目見て気に入り、
強引に迫ろうとします。王子はいましめを守って押し黙っておりましたが、心の中は怒りで燃えておりました。
上臈は王子がなびかないと分かると、この秘密が露呈するのを恐れて父王に訴え出ます。
「王様、王子は私に迫り、これこれのような酷い行いを働いたのでございます!」
たちまち烈火のごとく怒りだした王は、王子を処刑するように下知しますが、
慌てた大臣たちが、それを押しとどめるために、いかに女が奸策に長けているかを話して聞かせます。

「私はこんな話を聞いたことがございます」
ある太刀持ちが、いつも小姓を使いにやって亭主持ちの女と浮気をしておりました。
ところがある日、その小姓が主人に内緒で当の女と戯れておりました。
太刀持ちはいつものように後からやってきたので、女はとっさに小姓を地下室へ隠しました。
二人は楽しくいちゃついていましたが、折しも運悪く女の亭主が帰ってきたのです。

「どうしよう?」「大丈夫。あんたの刀を抜いて、私をさんざんどなりつけてください。
そして亭主が入ってきたら、そのまま帰ってくださいな」「わかった」
太刀持ちは言われるとおりに事を運び、そのまま帰って行きました。
亭主が「お前、これはいったいどういうことだ?」と聞きますと、
「いいところへ帰ってくださいました!先ほど一人の若者が、『助けてください!』とかけこんできて、
すぐさまあの男が後を追ってきたのです。私はとっさに若者を地下へ隠しましたが、
あなたが帰ってくるまで、あの男に脅されていたんですよ!」と、答えました。
それを聞いた亭主は「よくやった!」と妻を誉め、地下に隠れていた小姓を帰してやったのです。

なるほど、女というのは侮れない生き物だ。王様が納得すれば、今度は上臈が黙っていません。
「王様!男ほど悪だくみを用いて人を欺くに長けたものはおりません!私はこのような話を聞いたことがあります」

ある仲睦まじい夫婦がおりました。ある日主人の留守中に、一人の遊び人が館に忍び込みました。
(というのも、その男はかねてから奥さんを恋い慕っていたからです)
そしてベッドの上に、卵の白身をこぼしておき、そそくさと立ち去ったのです。
帰ってきた主人はそれを見つけ、妻が不貞を働いたと思い、さんざん殴りつけました。
女の悲鳴を聞いて、近所の人たちが集まってきましたが、その中から子供が進み出て、
鍋を取り寄せ、それを火であぶりました。そして固まってから少し食べ、皆にも食べてもらいました。
そして一同は「これは卵の白身だ」と結論を下したのです。早合点した主人は、妻に何度も謝り、金貨百枚を送ったそうです。

ははあ、なるほど。男というのはなかなか悪巧みに長けておるわい。
やはり王子は処刑せよ!と王様が言えば、また違った大臣が進み出て…。
と、こんな感じで7日間にわたって数々の物語が繰り返されていく。
ほかにも紹介したい面白い話がいっぱいあるのですが、ここまでにして後は本編にて。

回を増すごとに面白みにはまっていくイスラム文学。
次回はどんな話が出迎えてくれるでしょうか。

…といったところで、今年の紹介はここまでに致します。
一年間お付き合いくださり有難うございます。また、来年もよろしくお願いします。
皆様、どうぞよいお年をお迎えください。


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ストロベリーナイト

2008年12月28日 20:33

『誉田哲也』著 光文社文庫 435ページ

珍しく、刑事もの。
「グロいよ~食事のときには読まない方がいいよ」
と、職場の先輩に言われて貸してもらった本。
同僚も読んでたみたいで、「グロかった?」と聞いたら、
「んーそうでもないかなあ…」と。
私的には、「まあ、ちょっとグロいかな」くらい。

溜池近くの植え込みから、体中に無数の傷がついた死体が発見される。
何故かへその下から股間にかけて、一直線に切断されたあと…。

捜査一課の姫川玲子は、持前のプロファイリングセンスで、そこに違和感を覚える。
事件は「ストロベリーナイト」という謎の言葉とともに真相に迫っていく。

犯人が複数というのが途中でわかるんですが、推測は全員見事に外れました。
面白かったのは、味のあるキャラ達。博識な先生、ライバル刑事、恋も中途半端に終わったので、
続編あるのかな?と思ったら、「ソウルケイジ」「シンメトリー」と、案の定続いている。

ガチガチの刑事ものではなくて、主人公のヒロインが過去に心の傷を負って、
それを乗り越えていくところなんかは、ドラマチック。
ほとんど、こういうのを読まなかったので、
他の推理小説と、どこがどう違うのか分からなかったのですが、
割と人間味に重点を置いている作品であるかなと。

殺人のシーンなんかは、描写がストレートなので、
少し引いてしまうところもあり。
苦手な人にはお勧めできません。


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新諸国奇談

2008年12月27日 13:07

『阿刀田高』著 講談社文庫 322ページ

読めば読むほど、阿刀田さんはすごい!と思う。
そのタイトル通り、諸国の伝承や神話を材料にした短編小説なのだが、
その「諸国」といっても範囲が広い。

中国、ヨーロッパ、ベトナム、ロシア、ブラジル、エクアドル…などなど。
これだけ幅広い知識を得るには、並大抵の勉強では無理だと思う。
阿刀田さんがすごいのは、その一つ一つの事象に関連して、
他の物語などから共通点を見出してくる才能だ。

例え話ができるということは、物事の関連性を見つけることができるということ。
つまり、頭のいい人だと、ショーペンハウアーは言っていた。
キリストやブッダなど、カリスマ達はやたら例え話を用いる。
それに妙に説得力があるものだから、やっぱこの人スゲエ!ってなるのかも。
阿刀田さんもその能力が顕著に出てる作家で、そのせいか
エッセイなどを読んでても、話があっちこっち飛ぶ(笑)。

こういう伝承の類は、抽象的な話が多く、人によって好みは分かれる。
また、知らないよりか、知っている方が楽しめる事だって多い。
例えば「美しい眼」という話では、トロイア戦争からの帰路、
オデュッセウスが漂着した浜で遭遇する、単眼巨人のキュクロプスを題材にしている。

言い伝えの場所と、実際の位置関係を計算してみると、
現実的にはそこに漂着するのは難しいんじゃないかというところに焦点を当てて、
それを上手く題材として薄気味悪い小説を作り上げる。
阿刀田さんの博識ぶり、着眼点の鋭さが光る。

しかし、この人はほんっとに歴史とか伝承が好きなんだなあと作品を通して感じる。
長年の情報収集と、現地取材の賜物を、こうして私たちが作品を通して読めるのはありがたい。
そして、この文章の巧さ。ムダな贅肉の全くないスレンダーな文。
一日とかからずに読めてしまうが、内容の濃い一冊です。


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読書について 他二篇

2008年12月23日 18:39

『ショウペンハウエル』著 斎藤 忍随 訳 岩波文庫 158ページ

本の洪水におぼれている私たちにとって、かなり目から鱗の良書でした。

「読書は他人にものを考えてもらうことである。本を読む我々は、
 他人の考えた過程を反復的にたどるにすぎない。(中略)
 だから読書の際には、ものを考える苦労はほとんどない。
 自分で思索する仕事をやめて読書に移る時、ほっとした気持ちになるのも、そのためである」

確かに私たちはあまりにも人の意見に乗っかりすぎている。
こうして本を紹介しているのも、結局は人の考えを代弁しているにすぎない。
その本について思考を巡らせている訳ではない。
一般人は哲学者ではないので、何もそこまで…と思うこともあるが。

問題は出版されている本にもある。ショウペンハウエルは昨今出版されている本の
およそ9割は悪書であると言い切っている。
明確に言いたいことを持っている本というのは少ない。
ブームになっているのは、一年で忘れ去られるものがほとんどであり、
後世に残っていくものは少ない。

…でも、本当に本を読んでいると、考える力というのはなくなっていくのだろうか?
少なくとも良書を読んでいるときは、何度も物思いにふけることがある。
(その例をあげるとすれば、まっさきに古典が思い浮かぶのだから不思議だ)
そういう文章は、たいがい多くを語らない。
「こちらに思考をうながす」文章なのである。

べたべたと美辞麗句を並べたてたり、小難しい(自分の無知を覆い隠すような)文章にして、
読む側を立ち迷わせる行為は、「実際、下司下朗の仕事である」と、ショウペンハウエルも嫌悪している。
現代のジャーナリズムが好き勝手なことをいってる様を見たら、この人卒倒するんじゃないか(笑)。
いや、もちろん私もそれは同類なのであるが…。

一生における時間は非常に短い。
大洪水に巻き込まれる前に、箱舟に乗りたい人は本書を手に取るべし!


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人間腸詰

2008年12月17日 22:33

『夢野久作』著 角川文庫 250ページ

アメリカはセントルイスで開催された大博覧会。
大工の治吉は、そこで日本の専売「台湾烏龍茶」の売り子をするため渡米した。
そこで出会った支那人の美少女に出会う。
その美女はこちらに流し目を送ったり、しなを作ってみたりと、どうも治吉に気がある様子だ。

ある夜、治吉は外出禁止の命令を犯して、その美女ついていく。
到着したところは、アメリカでも指折りのギャング、カント・デックの館だった。
大工として腕のいい治吉に目をつけたのは、その技術をもってして
錠前を使わずに開ける箱を作り、その開け方を自分にだけ教えてもらいたいがため…である。

これはクサいぞ…と思った治吉は、その頼みを拒否するが、
カント・デックは帰してくれそうもない。大きなソーセージ製造機械を目の前にして治吉に迫る。

「あなた、この中に入ること好きですか?」

こういう類の話はよくあるけれど、夢野久作のは締め方がうまい。
気持ち悪っ…で終わらせるのではなくて、薄気味悪っ…って感じ。
ドグラ・マグラという代表作もあるので、推理小説家だという印象がありますが、
私にはどうも、それ以外のジャンルの方がクオリティが高い気がします。

この本にも8本の作品が収録されていますが、そのうち3作が推理物。
読んでみると、やっぱり「人間腸詰」よりかは劣る気がします。
タイトルが「人間ソーセージ」なだけに、どうしても第一印象が強くなってしまうからか。
しかし、晩年に書かれた「戦争」なんかは、グロテスクを通り越して、
むしろ人間の心理が怖っ!!って感じました。

「人間腸詰」も、グロテスクはグロテスクなんですが、それだけの小説なら
あんまり面白くないのではないかと思います。
夢野久作は狂人だとよく言われてますが、人間の奥底の心理、
その怖さを表現できる作家だからではないかと感じます。


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一千一秒物語

2008年12月17日 00:13

『稲垣足穂』著 新潮文庫 429ページ

少し読むには芸術センスが無さすぎたかな…。
読み終わるまでにとても時間がかかった一冊。
たしか二ヶ月くらい前に借りたような…(汗)。

いながきたるほ…んん、どこかで聞いたことがあるくらいだけど…。
「一千一秒物語」というのは、何度か他の本の後書きで紹介されていたので、
私も一度読んでみたいと思っていました。

新潮文庫のほかに、ちくま文庫でも出版されているが、
コチラは9タイトルを収録している。

・一千一秒物語   ・黄漠奇聞
・チョコレット     ・天体嗜好症
・星を売る店     ・弥勒
・彼等         ・美のはかなさ
・A感覚とV感覚

代表作である「一千一秒物語」には絵本的な世界が見られるが、
「美のはかなさ」なんてのは、何度読み返しても意味が分からない…。
完全な知識不足…ズーン。

「一千一秒物語」について言えば、詩的感覚が強く、200編くらいの短編が収録されているが、
~IT'S NOTHING ELSE~
 A氏の説によるとそれはそれはたいへんな どう申してよいか びっくりするようなことがあります それでおしまい

と、いった具合で続いていく。物語としてのストーリーを有して一番読みやすいのは「チョコレット」だが、
こちらも言わんとすること、テーマを読み取るのが難しい。
文章を見る限り「モダン」の一言に尽きる。1923年に出版された作品とは驚きだ。
そういえば貸してくれた友人も、芸術を愛するちょっと(かなり?)変な青年なのですが、
センスのある人のファンが多いのでしょうか。残念ながら、私にはこの美しさが想像力のエネルギーにならなかったようです。

稲垣足穂氏は、その後の作品はすべてこの「一千一秒物語」の注釈であるという。
他の作品と言えば、フロイトが出てきたり、デカンショの理論が出てきたりと、小難しい。
うぬぬぬ…やっぱり読書家を目指すのであれば、心理学と基本哲学は外せないのかしらん。

さりげに面白かったのは「A感覚とV感覚」。Aは所謂体の後ろの穴で、Vは女性の前の穴。
何故かこういう作家の人って、不思議に少年愛の傾向を持ってる人いますね。
ちなみに稲垣氏は「少年愛の美学」という作品も発表している。


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古畑任三郎2

2008年12月14日 01:02

『三谷幸喜』著 扶桑社文庫 253ページ

先日紹介した1巻に引き続き、2巻のご紹介。
1巻参照→http://hihidx.blog115.fc2.com/blog-entry-249.html

「ザ・マジックアワー」は皆さん見られましたか?
http://www.magic-hour.jp/index.html
終始笑いっぱなしで、私的にはかなりGOODな映画でした。
三谷さんの作品では少し前の「THE 有頂天ホテル」も見ましたが、これも良かったです。
古畑シリーズというと、ガラリと印象を異にするジャンルですが、
読んでると「あー、やっぱ会話のテンポが三谷さんだわ」と思うことしばしば。

収録は1巻同様5本。

・ちなみの家
・さよならおたかさん
・中川外科部長のコート
・迫坪秘書の長い夜
・木暮警部最後の事件

最後の木暮警部の話は特にお気に入り。
よく古畑さんは罠を仕掛けて犯人にボロを出させますが、今回もその手で解決します。
テレビで見た方は知っているでしょうから、あえてここで内容を紹介しませんが、
いや全く人間て基本的なことで騙されるもんですね。

前にホームズを読んだ時に「水の近くで重いものがなくなってると、必ず何かを沈めている」という
セリフがありましたが、なるほど、たしかに。そういう何気ないことを普通の人は注目しない。
作家というのはこういうところに常に注意を向けてネタ探しをしているのかしらん。

JALのCMで踊っている三谷さんを見ると、ホントにこの人が書いてんのかな…と思うこともあるけれど(失礼)。
しかし、この人は多才ですね。サラリーマンNEOに出演してた時にそう思いました。

ちなみにこの2巻で小説版は終わりです。
元ネタがあるので、他の人に書いて出版することは可能だそうですが、
大変な産みの苦しみを経てできた作品たちを、やすやすと人に任せたくないそうです。
私も三谷さんタッチだから面白いと思うので、それがよいだろうなあと思います。

参考までに「サラリーマンNEO」
http://www.nhk.or.jp/neo/(動画:新しいネクタイの結び方講座は必見です)


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肉蒲団 下

2008年12月11日 00:25

『李笠翁』著 足利 光彦 訳 富士見ロマン文庫 247ページ

テーマ月間に引き続いて肉蒲団の下巻の紹介。
上巻参照→http://hihidx.blog115.fc2.com/blog-entry-246.html

輪をかけたエロティックさ。上巻を読んでた時は、そういう本ばかり読んでたせいか、
そうは思わなかったけれど、改めて読んでみるとやっぱりエロいわ、これは。

第二の妻を得た未央生は、またしても一人の女性では物足りなく、さらなる楽しみを求めていたのでした。
やがて願いは叶い、三人の美女と、一人の熟女で乱痴気騒ぎをするようになります。
乱交というにふさわしい有様で、前半夜はあっちの女、後半からはそちらの女、
時には「串」の字を描いて楽しんで…という具合に、自慢のナニは大活躍。

さて、もともと自分の正妻が郷里にいる未央生でしたが、
その妻の玉香は、夫に性の歓びを教えてもらってからというもの、
一人寝の夜に欲情を持て余していたのでした。
そこに現れたのが権老実という男。実は前に未央生に妻を横取りされた男で、
仕返しとばかりに未央生の妻を犯してやろうとやってきたのでした。

家の雇人としてまんまと玉香に近づいた権老実でしたが、もともと女の方が
欲望をため込んでいたものですから、あっけなく落とすことができました。
もともとナニがデカくて精力絶倫の男でしたから、玉香はたちまちこの男が気にってしまいます。

権老実は最後には玉香を売春宿へ売ってしまうのですが、もともと容姿が極めて
美しかった玉香のこと、たちまち超売れっ子になってしまったいます。

遠い地で、その有名な売れっ子娼婦の噂を聞いた未央生は、
やっぱりこの女を抱きたいがために都に上ります。それが自分の妻とも知らずに…。

この話、面白く読めるだけではなくて、自分の犯した罪は必ず報いが来るというテーマを含んでいます。
ただ、教訓を垂れるのに読み手に興味を持ってもらえる本にする必要があり、
そのためこんなエロティック要素が強い作品にしたのだとか。

ただ、内容がエロいだけではなく、言葉も美しい。例えば、
「別の洞窟の水は、本来の水にはかなわない」
(性交の際、唾で入口を潤すよりも、本来の女性の愛液の方がいいという意味)。

またこの小説は第二十回から成り、その副題が面白い。
第十四回 「夫婦の楽しみを立ち聞きした玉香お嬢さんは
       入浴場面を演出して男の気を引きます」

冷静に見たら、登場人物たちの行動はどれも滑稽なものばかり。
最後の戒めのくくりでは、その滑稽さに気がつくよう仕向けてあるのは、
やはりただの官能小説と一線を画す作品といえるでしょう。


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古畑任三郎1

2008年12月06日 01:00

『三谷幸喜』著 扶桑社文庫 228ページ

ああ…今更だなんて言わないで下さい…。
随分前に借りたのに放置していた本…貸してくれた某氏…ゴメン。

推理小説を文学にするのは本当に難しい…と私は常々思うのですよ。
「文学は何かしら自分に得るものがある!」と固く信じて疑わない私にとって、
どうしてもこの推理小説というジャンルにそれを見出すのが難しいのです。

しかし面白い。小難しいことを考えずに、読み終えたときに
「は~、面白かった」と純粋に思えればいいじゃない。と、昔言われたことがある。
ドストエフスキーとか、トルストイとか、そんな本を読んでるわけじゃないんだから…と。
たしかにそれはそう。推理小説の価値をどこに感じるかによって、それは変わるのだから。

それにしてもホームズシリーズは例外だと思う。
あれは「推理小説を文学まで高めた」といえる傑作だと思う。
多くの教訓も与えてくれるし、推理もユニークで、トリックも面白い。そして何といってもあのキャラ。
この古畑警部補もそうだし、赤川シリーズもキャラが光る。
最近で言えば、東野圭吾氏の作品もキャラが光っていますね。
もちろん推理要素も大事だけれど、これらの作品はキャラクター性がヒット要素だと思います。
知ったような口きいてますね、すいません。

さて、フジテレビ系で放映されていたときに見ていた人も多いでしょうから、
今回は内容は置いといて、そのタイトルだけ紹介しておくと、

・おめでとう、アリ先生
・六代目の犯罪
・幡随院大、走る
・黒田青年の憂鬱
・井口薫のレクイエム

以上5つを小説版に収録。
犯人の視点から話が展開するので、最初から誰が殺したか分かる。故にワトソン訳の今泉氏は出てこない。
一話が丁度いいくらいに区切られてて読みやすい。手の空いたときに読めてしまうから嬉しい。

やっぱりドラマ見てると田村正和のイメージが強いですね(笑)。
見てても見てなくても、そこは上手くマッチングするのでご心配なく。

関係ないですが、三谷幸喜氏と、阿刀田高氏…、この二人の作家は
ものすごい気が合いそうな気がするのですが、そう思うのは私だけでしょうか…。


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飛ぶ教室

2008年12月04日 16:38

『エーリッヒ・ケストナー』著 山口 四郎 訳 講談社文庫 258ページ

トム・ソーヤーの冒険を思い出させるような、少年たちの心温まる物語。

前に職場の先輩が「読みたい~」と何度も言っていた作品。
そんなによいのかな?と思い、今回読んでみることにしました。
映画でも上映されているのに、私はタイトルからして
オズの魔法使いみたいに部屋ごと飛んでいく話だと思ってました。
ぜんぜん違いましたね。そんな訳ありませんよね。

キルヒベルク高等中学校に在学中の寄宿生ら5人の物語。
そこに素敵な大人2人も加わって、少年たちの心の成長を描く。
こんな温かい物語を読んだら、誰でも幸せな気持ちになることは間違いない。

5人の少年は、それぞれ不正を嫌う子、食いしん坊な子、臆病な子、小難しい子、孤児と色々。
彼らは、彼らの世界の正義にのっとって行動し、団結したり喧嘩をしたり、時には泣いたりする。
この物語の最初にケストナーは、「子供だって大人と同じ大きさの涙を流す」と言っている。

「このわんぱくどもめ」と、彼らを見守るのは大人の温かい目。
正義先生と禁煙さんという保護者たちに守られて、子どもは成長する。
本当にわくわくして、最後には感動に包まれるのです。

児童書というにはもったいなさすぎる本。
今でホロリと涙を流さずにはいられない一冊です。


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