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家畜人ヤプー5

2008年06月26日 18:32

『沼正三』著 幻冬舎アウトロー文庫 387ページ

やっとこさ最終巻へ突入。中断されていたまま未完だったものを完結させ、全49章。
1~4巻までの参照は、ブログ内検索「家畜人ヤプー」からお願いします。

本人もこの本が有名になり、部数を伸びたことを、
「猟奇への傾向は一時的な風俗現象にすぎず、万を超えた冊数も
 明日は覆醤の反故となり果てるのではないか。ただ、本来予定された、
 選ばれた少数の読者だけが、二度読んでくれるのではないか」
こうおっしゃっておられる。確かに私は喜んでこの本を二回読むかといえば疑問に思う。
人が本を選ぶというが、本も人を選ぶのである。

クララのセッチンになることを決心したリンは、彼女に無条件降伏を誓う。
かつての恋人の排泄物を受け止める事はもちろん、恋敵であったクララの新しい婚約者ウィリアムの
便器にもこれからはならなければならないのだ。しかし、彼はもうそれを「嫌だ」とは思わなかった。
彼の遺伝子からくる家畜人因子が誘発した決心だったのか、それは分からない。

クララはウィリアムとの婚約発表を、イース上流階級の人間が集まるパーティーで行い、
イース人としての仲間入りを果たした。そしてその夜、彼女はリンと二人きりの時を過ごす。
「かつては恋人であった」ことから、リンへ最後の憐れみを垂れようという気持から出た行動だった。

「リン、お前戻っていいわ。戻してあげる」

思わぬ慈悲。もう一緒にいられないが、リンを元の地球面へ帰し、
「人間として」生きる事が出来た時代へ、元の暮らしへ戻らせてもらえるというのだ。
…リンの出した答えは…。

今まで家畜人ヤプー1~4巻で色々な事を紹介してきましたが、最初は読み慣れないせいか、
漢字や読み仮名の羅列に飽きが来てしまうこともありました。5巻まで来ると、もう支障がありません。
ヤプー世界へのシンクロ率が高まったのでしょうか。

白人の入ったお風呂の排水が、黒人の貴重な飲料水扱いになって、
そこに混じっている毛が立った日には、「毛柱が立つ」といっていい事があるとか。
魚のようにヤプーの首をつけて出すヤプーステーキ。生きたままの肉をそぎ落とされ、
その苦痛から出る成分が、さらに肉の味を引き立てる。
他にも釜ゆで、フライパンの上で踊らされる料理法、サシミ、フォアグラ、脳みそのスプーンすくい。

考えれば私たち人間が動物にする残酷な料理に(多少の憐れみを感じる事があるとはいえ)、
グルメを求めるのと同じで、ただその材料が人と同じ形をしているだけというのなら、
何も問題はないのかもしれない…(?)。

「家畜人ヤプー」は世間から見れば圧倒的な少数派である。
しかし、こういった小説を必要としている人がいるということも事実であり、
作者もそういった人たちに支持されればよいと考えて発刊している。
リンの答えも、ヤプー存在理論も、とうてい理解の及ぶところではないが、
この小説は決して世の中から消えていくことがないであろうことは、推測が及んだ次第である。


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イスラム金融入門 世界マネーの新潮流

2008年06月23日 18:56

『門倉貴史』著 幻冬舎新書 222ページ

最近よく耳にする「イスラム金融」という言葉。まあ、仕事の勉強がてら読んでみる事に。
発売は2008年5月30日なので、最新ニュース盛りだくさん。
まず、イスラム金融といえば、四つの特徴があるそうで、

①利子取引がないこと
②契約中の不確実性
③投機的な行為
④豚肉、タバコ、お酒、武器、ポルノの使用や取引

こういったことを禁じています。
規制に適格かどうかはシャリーア(イスラム法)に基づいて判断されるのですが、
どうして利子を取ってはいけないのか?それは、利子というものは、
「寝てても発生する利益」であって、働かずに設けるというのはシャリーアで禁止されているのだとか。
でも、利子を取らずにどうやって金融システムが成り立つんだ?と思うことなかれ、
ちゃんとリース取引や、小売に近いやり方で、銀行を経営することができるのです。

イスラム金融が何故注目されるようになってきたのか?
根本的な理由としては、イスラム教徒の人口が増えてきていることが挙げられます。
コーランでは、人間が妊娠や出産をコントロールすることを禁じているので、
相対的に人口は年率2~3%ずつ増えており、世界人口にして25%を占めるようになってきています。
一般の銀行に預金をすると利子が付いてしまうので、イスラム教徒は預金をしない人も多いとか。
タンス預金がイスラム金融の浸透で市場に出てくる可能性は十分考えられるわけです。

二つ目の理由は、イスラム金融を信仰している国の成長が著しいということ。
BRICsの次はVISTAとか、ネクスト11とかよく言われますけれど、とある雑誌では
イスラム金融を信仰するポストBRICsとして、「MEDUSA」(メドゥーサ)が話題になってるとか。
マレーシア、エジプト、ドバイ、サウジアラビアで構成されるこれらの国は、
イスラム教徒の人口が多く、特にマレーシアは世界一のイスラム金融国。

そして最後、三つ目の理由は、我々も身に沁みて痛感している「原油高」。
いやーもー、ガソリン高いっすね!!最近。やってられないですよ。
この原油高騰で儲かっているのが中東の国々。よく聞くオイルマネーというのは、
今回の原油高で潤った国が蓄えている資金のこと。
中東はイスラム教徒が大半を占めるため、現地の投資家が運用をするにあたって、
イスラム金融の対するニーズはとても高い。これまでイスラム金融が発達していなかったので、
オイルマネーが欧米に流れていたけれど、現在は振興に伴って、そちらに資金が流れ始めています。

このような現状を受けて、各国はイスラム教国ではなくとも、オイルマネーの受け皿として
イスラム金融を振興させようという動きが活発になってきています。
日本でも有名な格付け会社スタンダード・プアーズが、イスラム法に適合した日本株を選別して、
「シャリア指数」という株価指数を作ったり、イオンがマレーシアでイスラム金融債を発行したりしています。
わざわざイスラム金融債を発行するのは、それだけ需要があり、低金利で資金調達できるからだそう。

新興国は特にこれからインフラ投資を始めるのに、積極的にオイルマネーを活用したいようで、
競ってイスラム金融の整備を始めています。
しかし、現状はイスラム法の解釈が世界各国で異なり、グローバルに展開しようにも、
出来ないのが実情のようです。イスラム銀行を作るためには、取引や商品が
イスラム法に反しないかを審査する委員会を作る義務があるそうで、最低でも審査委員が3人はいる。
しかし金融知識を持ち、さらにイスラム法の知識を持っている人は、世界で100人程度。
さらに英語ができる人は20人程度しかいないようで、多くの人が掛け持ちで仕事をしている。
そういう事もあって、一概にイスラム金融が拡大していくとも言えない。

現在では、そういった金融とイスラム法に精通する人間を育成するスクールもでき始め、
イスラム法の国際基準の整備も進んできています。
これから、それらの基盤が整ってくると、イスラム金融の浸透が加速していくことが考えられるんでしょうね。

これから目が離せない中東・オイルマネー。
是非とも日本株もその波に乗ってくれればいいのですが…ね(笑)。


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千夜一夜物語6

2008年06月22日 03:56

『リチャード・F・バートン』版 大場 正史 訳 ちくま文庫 634ページ

やっとこさ折り返し地点の397~536話を収録。
500話を通過したところで、まだシンドバッドは出てこない…。
はてしない物語は、シャーリヤル王の心を少しずつだが確実に穏やかにさせているのでしょうか?

これまで、2巻~5巻を紹介していますので、
ブログ内検索「千夜一夜物語」を参照してください。

今回は長編が2本と、短いお話がたくさんありました。
「若いつばめを持った女と、大人を情夫に持った女」では、
若い男をもった女は、「あんなヒゲもじゃのどこがいいの?」と言い、
大人の男をもった女は、「馬鹿だね。若い男なんて、こっちがイキもしないうちから
すぐ出しちまって、さきにへのこがぐにゃぐにゃになるじゃないのさ。それに大人の男は、
する時は、うんとこさグイグイ突っ込んでくれるんだよ。若造なんか相手にしてられますかっての」
と言いました。それを聞いた若い男の方の女は、
「私しゃアラーに誓って、今の人なんか捨ててしまうわ!」と言いましたとさ。
やっぱり、あっちの上手な方がいいんでしょうか?

特に興味深かったのがイスラム教の唯一神アラーを讃える教訓が、
異教徒(主にキリスト教)とどれだけ違うのかを象徴している話。
「キリスト教の王女と回教徒」では、ある一人の回教徒が邪教徒の国へ旅をする。
(回教徒とは、イスラム教徒の事)
やってきたのはキリスト教の国。城門の兵士に呼び止められ、
「あんた医者か?」と問われたので、「そうです」と答えると、城の中へ連れて行かれました。
王様は男の姿を見て医者だと分ると、すぐさま病気の姫のところへ案内させました。
すると姫は、もうベッドから起き上がっているではありませんか。

「あなたは一体どうしたんです?」と医者が尋ねると、
「私は4年前にアラーの啓示を受けましたが、周りは私を狂人だとか、
堕落したと言うようになりました。そしてこうして医者にかかっていたのですが、
あなたが現れて、やっと救いを得ることができました」といい、顔も健やかに回復しました。
そして二人は異教徒の国を抜け出し、メッカへたどり着き、そこで暮らしましたとさ。

シェヘラザードの語る物語は、わくわくする冒険や、少しエッチなのや、
軍事的なもの等、色々ありますが、こういったアラーの教えに基づく話は、
特にシャーリヤル王の心に響いたのではないかと思いますね。


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バートン版 カーマ・スートラ

2008年06月18日 18:35

『ヴァーツヤーヤナ』著 大場 正史 訳 角川文庫ソフィア 233ページ

カーマは「愛」、スートラは「教え」。
カーマ・スートラは古代インドの愛の技法を書いたもの。

どんな怪しげな技法が載っているのかと、スケベ心満載でページを開いた事を白状します。
カーマ・スートラでは、人生の主要目的を「アルマ」、「ダルマ」、「カーマ」があるとし、
この三つの間に調和がなければならないと唱えている。
「アルマ」は富。「ダルマ」は宗教的価値。そして「カーマ」は愛である。
つまり、物質的繁栄と、性的快楽と宗教を均等に追求していけば、
必ず幸福な人生が保証されるという訳である。

要するに、カーマ・スートラではその「愛」の部分をピックアップして、
人生幸福になるために、どういう性交をすればいいか、こんな方法がありますよという紹介をしている。
女性をオトすための方法や、男性が取るべき行動など、恋愛ガイドブックという感じ。
カースト制の階級名や、神様の名前が出てくるので、よく分からない単語もしばしば。

面白かったのは、日本では性交の四十八手というのがありますが、
古代インドでは六十四芸だったよう。う~ん、マハラジャ位とかあるんでしょーか…(なんだそりゃ)。
愛の技法と言っても、娼婦の地位がある程度認められていたインドでは、
富を求めて、女が男を捨てることも多々あったようで、以下では男を袖にする方法が列挙されている。

1.冷笑を浮かべ、足を踏みならしながら、恋人の不愉快な悪習と欠点をあげつらう。
2.恋人の知らないことを話題にする。
3.彼の学識を笑い物にし、ケチをつける。
4.彼の自尊心を傷つける。
5.学識や知恵の点で彼より優れている人に交際を求める。
6.ことごとに彼を無視する。
7.恋人と同じ欠点を持つ男たちをけなす。
8.彼の享楽法に不満をぶちまける。
                         …etc

う~ん、これは確かに腹が立ちますねえ。
これを見ると、古代インドの人っていうのは、とても自由に恋愛を楽しんでいるように見えますね。

折角なので、少しばかりHな話題を(笑)。
第九章では「口淫」についての記述があり、まずマッサージを口実にして相手の太ももに触れる。
男性のものが大きくなったら、それを両手で握りしめて、そういう状態になったことをからかう。
相手の男に口淫を迫られたら、まず首を振って断り、最後にやっと渋々承諾する。

第一に片手でリンガ(男性器)を持ち、口唇の間で動かす。
次に花のつぼみのようにすぼめた指でリンガの根元を抑え、歯も使いながら、リンガの側面を唇で圧迫する。
その先をせがまれると、閉じた唇でリンガの根元を圧迫し、抜去するがごとく接吻する。
さらに先を求められて、リンガを口中深く含んで、唇で圧迫し、次にこれを引き出す。
リンガを片手で支えながら、下唇に接吻するように接吻する。
接吻の後、いたるところで舌に触れる。
この時その半分を口腔に含み、強く接吻しながら吸う。
相手の承諾を得て、リンガをすっかり口腔に含み、さながら飲み込もうとする。

本当はそれぞれにやり方の名称がついてますが、省略。
他にもリンガを大きくする方法などが載っていまして、その気になる方法ですが、
木に巣くっているある種の虫の針毛でリンガを摩擦し、次に油で十日間また摩擦し、
再び針毛による摩擦を行う。しだいにリンガが大きくなってくるから、今度は穴のあいた寝台に横たわって、
リンガを垂れ下がらせる。そして、冷えた調合薬を使って膨張の痛みを取り除く…。

気になる方は、直接カーマ・スートラを参照してお試しあれ(笑)。

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ヒメたちの戦場 No.1ブランド「アンタイトル」トップ店長の技術と心

2008年06月16日 19:34

『松井美香』著 メディアファクトリー 191ページ

「辞めたい。何もかも辞めてしまいたい」

阪急百貨店、梅田本店二階。レディースブランド「アンタイトル梅田阪急店」の店長、松井美香。
ある朝、いつもの阪急電車に揺られ、変わりない朝の風景を眺めながら梅田についた。
阪急百貨店を前にして、彼女は引き返した。

「どうしても行けません。すいません」

No.1店舗のプレッシャー。
電話をかけながら泣いていた。

私も営業のはしくれなので、気持ちが痛いくらい分かります。
数字へのこだわり方、あのプレッシャー。
ステージは違えど、物を売るという仕事はとても大変です。

平凡な女性で、人より少しオシャレ好き。
母親の影響を受けてアパレルへ就職することになり、
「結婚したら専業主婦になるんだから」という、ありがちな気持で仕事をして過ごしていたが、
ある日、運命のスパルタ上司に出会い、そこから店長まで昇格し、数ヶ月後…。
まさかの降格。売上もまったく違い、規模の小さい店へ左遷。
張りつめた毎日から、責任を取らなくていい安穏とした日々…。

浅い川が目の前にあれば、そこを渡ってしまうのが人間というもの。
この人も平凡な普通の女性だった。

しかし、今度は阪急梅田店への異動。そして店長へ。
とにかく悩むことから、落ち込み方から、すべてが営業・販売の仕事をする上で通る道ばかり。

この本には「魔法のようなセールストーク」であるとか、
仕事のテンションを保ち続ける方法であるとか、そういったことは書かれてません。
ただ、普通の女性の働く上での悩み、苦労を語った本です。
私は読んでいると、感動ではなく、悲しいのでもなく、目頭が熱くなりました。

それは、あまりに自分がしている苦労と似ていたから。
No.1店長という華やかな名前の裏に、自分と同じような苦労を重ねている一人の女性を見たから。

働く女性に、とても力を与えてくれる一冊だと思います。
私も会社の人に勧められて読みましたが、1時間くらいあれば読めるので、
活力をもらいたい人、何のために仕事してるんだろうって落ち込む人、
そんな人には是非オススメしたい一冊です。


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神の吹かす風(下)

2008年06月15日 22:46

『シドニィ・シェルダン』著 天馬 龍行 訳 アカデミー出版 383ページ

また、やられてしまった…。
シドニィ・シェルダンにはいつもハメられる。
まさか、いや、そのまさかが本当は…。展開はいつにも増してスピードが速い。

上巻はこちら→http://hihidx.blog115.fc2.com/blog-entry-131.html

一度はルーマニア大使を断ったメアリーだったが、
ある事件をきっかけに、公式に大使に就任することになった。
パーティーに明け暮れる日々、大使館の中で盗聴器が仕掛けられない日はない。
メイドにも気は許せず、緊張の続く日々だった。

新米大使は、現地のスタッフたちに歓迎されていないようだった。
特に気に入らないのがマイク・スレードだ。
大統領からとても信任が厚く、ルーマニアの事も詳しい。
しかし、メアリーはスレードが自分を辞めさせるように仕向けているように思えて仕方ない。

そんな周りの対応を裏切るように、メアリーは予想以上の仕事っぷりを見せた。
イオネスク大統領に対して、彼をうまく手玉に取ることもあった。
とにかく彼女の大使就任は、大成功と言わざるを得なかった。

しかし、「神の吹かす風」は止める事が出来ない。
革命家のマーリン・グロンザは、暗殺のプロ、アンヘルなる人物の手で殺された。
それも、直接彼が手を下したわけではない。したことといえば買い物ぐらいのものだ。
次のターゲットはメアリーである。

彼女はそんな事に全く気が付かず、忙しい毎日を送っていた。
夜道に襲われそうになったのを救ってくれた医師のルイとの出会い。
気の張る一日の中でも、彼女に安らぎを与えてくれる人物との出会いだった。
しかし、魔の手は彼女の知らないところで迫っていく。

壁に赤いスプレーで書かれた脅迫文。コーヒーに入れられていたヒ素。
誰が信じれるのか、誰が敵なのか。
そして、「自主愛国者同盟」なる裏集団。
とてもフィクションとは思えない。
実際に世界はこのようにして権力が動めいているのだろうか。

今回の作品は、シェルダン氏の作品の中でもバックスケールが大きく、
ゾッとする恐ろしさを感じる作品でした。


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NHKスペシャル 四大文明[メソポタミア]

2008年06月08日 00:34

『松本 健・NHKスペシャル「四大文明」プロジェクト』編著 NHK出版 254ページ

ようやく四大文明の2つ目に取り掛かる余裕ができ、手に取ったのはやはり「メソポタミア」。
前回のエジプトはこちらから→http://hihidx.blog115.fc2.com/blog-entry-52.html

バベルの塔に代表されるジッグラトや、楔形文字、ウルの秘宝、ギルガメシュ叙事詩などはメソポタミアの産物。
また、世界で最古の文明であることや、文字を最初に開発したのもメソポタミアと言われている。

「メソポタミア」とは、古代ギリシャ語で「二つの大河に挟まれた土地」と意味する。
チグリス、ユーフラテス川はどちらもトルコのアナトリア高原を水源としている。
イラクを南へ流れ、2つの川は合流してペルシャ湾へ注いでいる。
以前このブログでエジプト文明を紹介したが、エジプトはナイル川の氾濫をそのまま受け入れることで、川と共に生きてきた。
反対にメソポタミアは、川を整備し、水を引き、人が手を加えた文明であると言える。

大きく分けて、メソポタミアは4つの文明に別れる。シュメール、アッカド、バビロニア、アッシリアである。
初期の文明としてはシュメールが挙げられ、ウルやウルクはそこで栄えた都市である。
イラクといえば灼熱の乾燥しきった砂漠を思い浮かべる人は多いだろう。
何故こんな土地に、人類最古の文明が誕生したのか。この歴史に触れるとき、誰もが抱く疑問だ。

その答えは「麦」にあった。

人の手による耕作は、元は全てそうであったように、野生種からであった。
野生の麦を発見した人類は、人工的に栽培を始める。
しかし、川の上流で、天水に頼った農業は、気候による偏りが多い。
麦作技術を持った人々は、肥沃な河口の泥を求めて南下をはじめる。
そして、シュメール文明の原型が築かれたのだという。

しかし、文明が発展するために必要なことは、安定した食料が確保されるという前提がある。
南部へ移動するほど雨量が少なくなるイラクでは、気候の厳しさは増すばかり。
そこで生まれたのが灌漑農業である。運河を掘って大河から水を引き、安定的な食糧を確保していたことが、
当時の地図からも分かっている。つまり、気候に恵まれた場所では特に新しい発想は生まれず、
条件的に恵まれない場所の方に、かえって革命的な新技術が生まれたのだから、人間の知恵には驚きだ。

川と人との関わりは、このようにして形作られたわけだが、建物の方はどうだろう。
我が家にはブリューゲルの「バベルの塔」のパズルがデカデカと飾ってありますが、
モデルになったのはもちろんバビロニアのジッグラトである。
メソポタミア文明の王朝は、多くがこのジッグラトの建設を行っていた。

現在に残るウルやニップールのジッグラトの写真を見ると、何か違和感を覚える。
砂漠の中にポツンとある崩れたレンガの塊。そう、周りに建物の材料となりそうなものが無いのだ。
大河の河口の低地で栄えたシュメールには、石も木材も存在しない。
あるものは砂だけであり、人々は泥から作ったレンガを専ら建築に利用した。

今日でも用いられているレンガは、木の枠に泥を入れ、空き地に並べて天日干しにするだけという、いたって簡単なもの。
そして、レンガとレンガの間に塗りこめられ、セメントの役割を果たすものには、
地面から不気味にボコボコと噴出している「瀝青」だ。天然のコールタールである瀝青は、日本の別府の「地獄めぐり」の様子に良く似ている。
資源が少ない土地で、こうして人知によって都市が作り出されていくというのは、とてもロマンがあることです。
そして、レンガ作りに必要な水や、高度を増すための麦のおが屑。やはり根底にはそれを支える川の存在があったのです。

さて、メソポタミアで忘れてはならないのが、「ハンムラビ法典」の存在でしょう。
完全に残っているものとしては、世界最古の法典で、「目には目を、歯には歯を」で有名ですね。
現在ではパリのルーブル美術館所蔵になっています。この法典の内容を知るとき、
(奴隷などの差別的前提を除けば)、その完成度の高さに驚かされます。
例えば、製造物責任法。日本では1995年にPL法によって具現化されたものが、
この時既に取り入れられており、被害者救済の立場に立って法典が作られているのだからスゴイ。

土地柄、このように厳しい環境であるにもかかわらず、メソポタミアは多くの歴史的重要物を残してきた。
しかし、この国の治安は湾岸戦争に例を見るように、極めて不安定だ。
ウルのジッグラトに至っても、多国籍軍の戦闘機から発射されたミサイルが近くに着弾し、
破片が飛び散って出来た穴が400以上もあり、生々しい。
また、戦時中に駐在していたアメリカ兵らは、遺跡を掘り返し「土産物」を持ち去ってしまった。
今現在も入国チェックは厳しく、調査が再開されない遺跡も多い。

古代の遺産は人類全体の宝。古代メソポタミアでも数々の王朝が盛衰し、戦乱が繰り返されてきたが、
その姿は現代の私たちと、どれほどの違いがあるだろうか。


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シャーロック・ホームズの事件簿

2008年06月07日 23:53

『コナン・ドイル』著 延原 謙 訳 新潮文庫 333ページ

ホームズシリーズでは後期の作品群。短編10作を収録。
ここまでくると、ワトスンとホームズのコンビも阿吽の呼吸とでもいえばいいか、
ホームズが愛用するタバコやヴァイオリンのように、ワトスンもその思考に
なくてはならない存在になってきたようだ。

今回興味を引かれたのが、ホームズ自らが綴った事件簿が二作入っていること。
回想録という形で、これまでのストーリーはワトスンがホームズと共に解決したか、
または彼から聞いた話を、物語としているのに対し、今回「白面の兵士」と「ライオンのたてがみ」では、
彼が筆を取ったという形式のものだから面白い。

特に「ライオンのたてがみ」は、「小さな農場へ引退したい」と言っていたホームズが、
実際に南イングランドの浜辺へ別荘を構えて、隠居生活を始めてから起こった事件であり、
作者自身も含め、ホームズシリーズの晩年期を思わせる。

少し残念なのは、ホームズの見せる推理が文章的に多く取り入れられなくなったことで、
「つまらないような些細な事からでも、推理を導き出す」という彼の魅力が、紹介されつくされてないのではないかと思う。
ただ、彼の人間味に関しては得るところが多く、例えば「覆面の下宿人」では、顔に大怪我を追った女性が、
自殺するのを押しとどめたりする。それが感情的に説得するのではなく、
いかにも冷静に理路整然と行うのが彼らしい。

そして、彼の人間味が一番出ていたのではないかと思うのが、
「三人ガリデブ」の作品の中で、ワトスンが犯人に銃で撃たれるところ。
ワトスン本人も言うように、「マスクのような冷ややかな顔の影に、こんなにも深い誠実と愛情を秘めている」のだと。
普段は冷静沈着なホームズも、この時ばかりはうろたえ、唇は震え、ワトスンを心配した。
こういった垣間見せる彼の人となりが、楽しめる作品が多かった気がする。

なんだか、明らかに読む順番を間違えてしまっている。正確な発表順というわけではないが、
長編と短編に分けると、流れはこんな感じ。
長編…「緋色の研究」→「四つの署名」→「バスカヴィル家の犬」→「恐怖の谷」
短編…「冒険」→「思い出」→「帰還」→「最後の挨拶」→「事件簿」→「叡智」
最後の「シャーロック・ホームズの叡智」だけは、翻訳時に割愛した部分をまとめたもの。

WEBで調べればすぐ分かることですが、あくまでも参考までに。


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神の吹かす風(上)

2008年06月07日 23:24

『シドニィ・シェルダン』著 天馬 龍行 訳 アカデミー出版 260ページ

ハラハラしたい時に読む作家と言えば、やっぱりこの人の作品ですね。
シェルダン氏の多数ある著書の中でも、男性が主人公なのは
今まで一作しか読んだことがないくらい女性が活躍しますが、
今回も例に漏れず美人が主人公です。

大統領就任で沸くアメリカ。新大統領のポール・エリソンは、東欧諸国に対する
「国民外交」に使命を燃やしていた。もちろん最終目的は世界平和である。
そのためにも、まずルーマニアへ大使を派遣し、外交を行う必要があった。
しかし、問題はその大使を誰に任命するかだ。

メアリー・アシュレーは大学助教授である。
東欧の政治学を専門に扱う極めて聡明な、美しい女性だった。
夫のエドワードは医師をしており、二人の間には可愛い子供が二人いた。
「私は世界一幸せな人間だわ」
何の不自由もなく、夫には深く愛され、充実した毎日を送っている。

ルーマニアでは大統領イオネスクの独裁が続いており、
彼を脅かす革命家、マーリン・グロンザは命を狙われていた。
目下フランスの保護の下、匿われているグロンザだったが、
折を見てルーマニアに戻り、革命を起こすチャンスを狙っていた。

ルーマニア外交を進めるアメリカ大統領。
東欧政治学の優秀な女教授。
革命家とその暗殺をたくらむ影。

この三つのポイントが絡み合って話は進んでいく。
メアリーは突然ホワイトハウスから電話を受ける。
ただの片田舎に住む30を過ぎたオバサンが書いた東欧外交に関する論文が、
大統領閣下の目に留まったというのだ。

民間からの起用を望んでいた大統領は、じきじきにメアリーへ依頼するという行動に出た。
しかし、夫もいれば子供もある身。メアリーは一度は名誉ある仕事を断るが…。

日本で翻訳されているシェルダン氏の作品順からいえば後半のもの。
場面展開が速く、同時進行で他の犯罪が動き出す。
そこらへんの話の進め方はだいぶ手馴れたもの。
無駄のないストーリーの流れです。

シェルダン氏のパターンは、焦らして焦らして最後に爆発!みたいなのが多いので、
今回もそうであると期待して読み進めていくことにします。


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寓話 3

2008年06月07日 22:50

『谷口江里也』著 ギュルダーヴ・ドレ画 アルケミア出版 237ページ

ついにこれにて最終巻。ラ・フォンテーヌの寓話第三巻。
240話すべて読み終えた時には、その揶揄の多さに半ば呆れつつ、
よくもここまで人の愚かさ、切なさ、美しさを発見できるものかと溜め息が出ました。

一巻はこちら→http://hihidx.blog115.fc2.com/blog-entry-123.html
二巻はこちら→http://hihidx.blog115.fc2.com/blog-entry-127.html

寓話は動物をモチーフに話が展開するものが多いですが、今回は人間がモデルの話も多かった気がします。
そして、「さて、あなたはこのあとどうしますか?」とか、「今後どうなったと思いますか?」という
問いかけのストーリーが多く、とても哲学的。

基本的に谷口さんも、ラ・フォンテーヌも、人生観は良い意味で楽観的だったようで、
現代風に言えば、ナンバーワンよりオンリーワン。素直な気持ちで人生を歩んでいきましょうねという印象。
人間が賢いだなんて思わないこと。でも、卑屈になりすぎるのもいけない。
これだけ揶揄されると、何をしてもダメな気になるけど、そうではない。
ようは平凡に生きろということか?こんな風に何百年も前に書かれた物語が、
今も我々の心に響くのだから、人というのも進化のない生き物なのかもしれません。

今回もお話を一つ。

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「イヌと妄想」

川縁にいた二匹のイヌが、川上からゆったり流れてくる溺れた動物を見つけた。
二匹のイヌはそれを見て、大きな肉の塊が流れてきたと思って喜んだ。
ただ、問題はその獲物が川の真ん中を流れていて、どうも岸辺の方へは流れてこなさそうなことだった。

そこでこのイヌたちはとんでもないことを考えた。
まず一匹のイヌは、問題は獲物と自分たちを隔てている水にあると考えた。
そしてあろうことか、川の水を全部自分で飲み干してしまおうという暴挙にでた。
イヌの頭は既に妄想でいっぱい。善は急げとゴクゴク水を飲み始めた。

もう一匹のイヌは、なんとバカなやつだろうと、それを眺めていた。
そんなことが出来るわけないのは、このイヌには考えるまでもないことだった。
そこでこのイヌは全く違う方法を考えた。

それはつまり、風の向きを変えれば何とかなるのではないかということだった。
風は川岸から向こうへ吹いており、その風に吹かれて獲物はどんどん遠のいているように思えたからだ。
それは一見、論理的な考えといえば言えなくもなかった。
問題はどうやって風向きを変えるかということだが、そのイヌは何と
大きく息を吸って風を吸い寄せ、その力で変えようとしたのだった。

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いやはや妄想とは恐ろしい。
我々も妄想と計画の違いには気をつけなければいけませんね。


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