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ドイル傑作集3 恐怖編

2009年12月07日 21:51

コナン・ドイル』著 延原謙 訳 新潮文庫 175ページ

ドイルが晩年にまとめたというテーマ別作品集も、これで最終巻。
「ミステリー編」「海洋奇談編」で、正直パッとしない作品も多々あったのですが、
「恐怖編」で持ち直したか。本来のドイルらしい良作が拝めたので嬉しい。

収録は以下の6作品。
・大空の恐怖     ・革の漏斗
・新しい地下墓地  ・サノクス令夫人
・青の洞窟の怪   ・ブラジル猫

「恐怖」と一言に言っても、どういうタイプのものが登場するかと言えば、
一つは「怪物」のような非現実的なもの。もう一つは「人」の怖さ。
前者は「大空の恐怖」「青の洞窟の怪」で、他の作品が後者に分類しても
いいのではないかと思われます(かなり無理やりですが)。

ドイルの時代なら、「怪物」が出てくる小説は他にいくらでもあっただろうし、
それらの土台がある事を考えれば、「怪物」のストーリーに典型すぎるところがあると思う。
「大空の恐怖」に関しても、ハードボイルドヘミングウェイ的)な領域まで及ぶわけでもなく、
「結局何だったんだろう、この話は?」となってしまう。

注目したいのは、「人」の恐怖。
「新しい地下墓地」、「サノクス令夫人」などは、オチが読めるものの、
いわゆる「期待通り」に話が進んでも飽きさせない内容で見事。

特に「サノクス令夫人」に関しては、100ポンドのお金に浅ましく惹きつけられ、
思いもよらない手術をしてしまう医者の、ちょっとした心境など巧みに捉えています。

さらに注目したいのは、舞台設定。
古代ローマの地下墓地、考古学的資料が散乱したような部屋…など、
ゴシック趣味が話にとてもマッチしていて、作品としての雰囲気が良い。
「ミステリー編」「海洋奇談編」と、中途半端なイメージしか描けないような、
作品もありましたが、ここにきてやっと本家がお目見えした感じですね。
さくさく読んで、印象にも残る傑作が揃っていると思います。


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ドイル傑作集2 海洋奇談編

2009年10月28日 23:42

コナン・ドイル』著 延原 謙 訳 新潮文庫 221ページ

先日の「ミステリー編」に引き続き、第二弾の「海洋奇談編」へ。
その名の通り、海をテーマにした作品が収められているのですが、
ドイルが晩年になって、テーマごとにカテゴライズしたのは先日紹介したとおり。

経緯○○度、緯度○○度…といきなり言われても分からないような所もありますが、
さらっと読み飛ばすのであれば、問題はありません。
ドイルが医者として、一年間船医をしていた経験が生きた作品たちでした。

収録作品は以下の6作。
・縞のある衣類箱
・ポールスター号船長
・たる工場の怪
・ジェランドの航海
・J・ハバクク・ジェフスンの遺書
・あの四角い小箱

日本をテーマにした作品がある…というので楽しみにしてたのが「ジェランドの航海」。
横浜が舞台なんですが、うーん…別に日本でなくてもよかった内容かな。

面白かったのは、実話のメアリー・セレスト号(マリー・セレスト号)を取り扱った作品。
「J・ハバクク・ジェフスンの遺書」というタイトルですが、このジェフスン博士が、
未だに謎の解けていない、「無人で漂流していた船」、メアリー・セレスト号の客として乗っており、
どうして船が無人で漂流していたかという謎を、遺書によって解き明かすというもの。

全体としては、自由に作品書いてるなあ~~という、筆の進みが早い印象を受けました。
「ミステリー編」よりか、スケールが大きくてドイルらしいかなと思うので、こちらの方が好きです。
ただ、「これ!」と印象に残るようなのは少なく、面白いが、感銘は受けない。
あくまでも、ドイルの作品では、こういうのもあるんだな、という感じ。

残すところは、「恐怖編」のみですね。また、紹介します。


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ドイル傑作集1 ミステリー編

2009年10月08日 23:39

コナン・ドイル』著 延原 謙 訳 新潮文庫 252ページ

ドイルって、ホームズしかイメージなかったんですが、
本当はそれ以外の作品の方が多いんですね。

特定の主人公いない短編集で、オムニバス形式。
天才探偵が登場するわけでもなく、告白によって事件の解明が行われるようなのが多い。

収録されている作品は、ドイルが死の前年に、これまでの短編集を
カテゴリーごとに再編集した中で、「ミステリー編」と名づけた作品集から取ったもの。
例外として「五十年後」はオムニブックに加えられていない。

・消えた臨急    ・甲虫採集家
・時計だらけの男  ・漆器の箱
・膚黒医師     ・ユダヤの胸牌
・悪夢の部屋    ・五十年後

異色を放つのが、「悪魔の部屋」。およそ結末が肩すかしで、ドイルらしからぬ。
「五十年後」に関しては、訳者が雑誌に掲載して反響が大きかったため、
今回の短編集にも収録されることになったが、これはミステリーではなく、
妻が夫の帰りを貞淑に待ちづづけて感動の再会を果たす、王道ストーリー。

ドイルらしいなぁ~と感じたのは、「消えた臨急」。
とある紳士が、臨時急行列車を大金はたいて運行させた。
しかし、臨急は予定の駅には到着せず、こつぜんと姿を消したのだった…。
「時計だらけの男」なんかも、ミステリー性があってよかったと思います。

ただ…、やはりちょっと物足りないかなぁ、という気がします。
アイデアや奇異性は、他の作品と劣ってはいないのですが、「勢い」がなくて残念。
いわゆる「ハラハラ・ドキドキ」が、無い。

贅沢言いすぎですかね~。ホームズばかり読んできたので、その印象から入ったから感じるのかも。
やっぱりホームズは、キャラクター性で小説の魅力を押し上げてたんでしょう。
ちなみに、シャーロック・ホームズのシリーズはカテゴリー「コナン・ドイル」より。

新潮文庫から出ている傑作集は、「海洋奇談編」「恐怖編」と続きますが、
こちらの紹介も、おいおいしていきたいと思います。


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シャーロック・ホームズの叡智

2009年09月30日 22:51

コナン・ドイル』著 延原 謙 訳 新潮文庫 271ページ

ついに最後の文庫になってしまいました、新潮文庫での最終巻。
今までに紹介した作品群は、カテゴリー「コナン・ドイル」よりどうぞ!

最後の物語は「シャーロック・ホームズ最後の挨拶」を紹介した時に書きました。
「シャーロック・ホームズの叡智」という作品は、本来ありませんが、
文庫の容量に関する問題から(別に問題ないとは思いますが…)、
他の短編集から削ったものを、最終巻として新潮文庫が出したものです。
なので、ホームズとワトスンが過ごした時期も交錯しています。

以下、作品名を、本来収録されてる短編集名と共に挙げます。

「技師の親指」 「緑柱石の宝冠」 
           … 「シャーロック・ホームズの冒険」より
「ライゲートの大地主」 
           … 「シャーロック・ホームズの思い出」より
「ノーウッドの建築士」 「三人の学生」 「スリー・クォーターの失踪」 
           … 「シャーロック・ホームズの帰還」より
「ショスコム荘」 「隠居絵具屋」 
           … 「シャーロック・ホームズの事件簿」より

訳者の延原氏が言われるように、日本での出版において、これらの作品を短編集から
省いてしまったのは、決して他の作品の劣っているというわけではない。

特に「技師の親指」が非常に面白かったです。
ワトスンのもとに治療を願いに来た男は、親指を切断されていた…。
その男、水力技師のハザリーは、スターク大佐という人物から依頼された仕事で、
殺されそうになったのだという。ワトスンはホームズを紹介し、その事件のあらましを聞く…。
それによれば、儲け話のために極秘で水圧機の故障を見てほしいと依頼を受けたが、
現場に着いてみると、謎の婦人に「逃げなさい!」と警告される。
報酬額の大きさに、その警告を拒んだハザリーだったが…。

…この本で、ホームズシリーズは本当に最後になってしまいました。ガックリ。
初めて読んだ時、こんな面白い探偵小説があったのか!と、感動したのもまだ記憶に新しいです。
イギリスへ行った際には、必ずベーカー街へ行きます!ああ、行ってやるともー!
またホームズを読み返す日が必ず来る事でしょう。それまでは、本棚に重鎮として居座って頂きましょう!


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シャーロック・ホームズ最後の挨拶

2009年04月06日 23:49

『コナン・ドイル』著 延原 謙 訳 新潮文庫 310ページ

ホームズの文庫を読むごとに、あぁ…あと×冊で読むのがなくなってしまう…と考えてしまう。
私も残すところ、「シャーロック・ホームズの叡智」だけになってしまいました。

この本で注目したいのは、やはり「最後の挨拶」。
ドイルはこれを書いたあとに、12篇の作品を手掛けているけれど、
話としてはこれが最後の事件ということになっている。

隠居して田舎で養蜂をしていたホームズが、
久しぶりにワトスンと再会して事件を手掛けるというものだ。
この時でホームズの年齢は60才くらい。
私の中で彼はサザエさん並みに年をとらないですが(笑)。

今回は全体的にユニークな作品が多かったかなと思います。
切り取られた耳が塩漬けになって送られてくる「ボール箱」、
ホームズの兄マイクロフトと共に、国家機密の潜航艇設計図を取り返す、
「ブルース・パティントン設計書」、スマトラの伝染病にかかり、
死にかけのホームズが奇策を弄する「瀕死の探偵」なんかは、
ワトスンとの友情が輝いてて、とても好きですね。

友情の話が出ましたが、一番最初に読んだのが「冒険」だったのですが、
この時から比べたら、ホームズとワトスンの関係というのは
実に深くなったものだなあと思います。
登場人物たちの変化が、読む側のスピードと同化して
いつのまにか溶け込んでいたのだなあと思うと、少し嬉しいですね。

このブログでは、当初からホームズシリーズは絶賛してきましたが、
ここまでくると余計な書評は無用というもの。それに、ここまで読んだ人なら、
おなじみの警官の名前や性格、ベーカー街の雰囲気、
ホームズの感情表現の仕方など、あたりまえのようにドイルの世界が
頭の中で描かれているのではないでしょうか。

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シャーロック・ホームズの帰還

2009年03月16日 22:53

『コナン・ドイル』著 延原 謙 訳 新潮文庫 389ページ

前回の「シャーロック・ホームズの思い出」で、宿敵モリアティ教授と、
ライヘンバッハの滝で死んだはずのホームズ。
しかし、読者からの強い要望に応え、ドイルはホームズを”帰還”させた!

「シャーロック・ホームズの思い出」↓
http://hihidx.blog115.fc2.com/blog-entry-271.html

私のようなにわかファンにとっても嬉しい復活!
自分の死を悟られないように、しばらく東洋方面へ漂泊していたホームズが、
ある事件をきっかけにロンドンへ戻ってくることになった。
生きているホームズを見た時のワトスンの驚きようと、喜びようはぜひ本編を読んでもらいたい。

これで最後…と「思い出」で考えていたにも関わらず、
復活以後の方がエピソード数して多いのは、ファンの熱狂ぶりがうかがえる。
その通り、ますます円熟した筆致はホームズ・シリーズでも一番と言われる、
「金縁の鼻眼鏡」を始めとして、「六つのナポレオン」など、有名な作品を生み出している。

しかし、やはりこの巻で注目したいのはホームズが”帰還”する「空家の冒険」。
巧妙な変身でロンドンへ戻ってきたホームズ。
ワトスンとの再会、モリアティ教授に次ぐ危険人物、モーラン大佐との対決。

1894年の「最後の事件」から、間に長編(バスカヴィル家の犬)をはさむものの、
直接的に復活する「空家の冒険」1905年までの間は、実に11年間。
当時のファンにとっては、これぞ待ってましたの一編。
事件の内容もさることながら、どうしてホームズは助かったのか?
その部分が知りたい!という欲求を十分に満たしてくれる内容だったのではなかったでしょうか?


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シャーロック・ホームズの思い出

2009年02月11日 04:06

『コナン・ドイル』著 延原 謙 訳 新潮文庫 350ページ

はあ~、やっとホームズ先生の本が古本屋で見つかりました。
いやあ、100円棚の中にこの青い背表紙を見つけた時は、
数ある本の中からその部分だけが、やおら光って見えましたよ。
ありがとう、ブックオフさん!!

今回もやっぱりがっつり面白かったです!
ホームズの兄マイクロフトが出てくる「ギリシャ語通訳」や、
宿敵モリアティ教授との「最後の事件」など、ファンにはたまらんです。
「グロリア・スコット号」は探偵業を始めるきっかけになった事件だし、
「マスグレーヴ家の儀式」は仕事を始めて受けた最初の依頼。
まさに「思い出」というタイトルにふさわしい。

この短編集でホームズシリーズはいったん終わりのように見えるが、そこは読み手の許さないところ。
世間からはもっと続きを!という要求が強く、ドイルはその後も多くの作品を残している。

ホームズは読むたびに「探偵小説はこういったものを指すのだ!」と思える。
訳者の延原氏が巻末の解説で書いていた、「探偵小説は読者の注意をひくため、
残忍な殺しが出てくるが、エロ・グロは必ずしも必要ではない」という意見は真髄を突いていると思う。
本来、探偵小説はその推理が面白いのであるから、例えばホームズがパイプを見て、
その持ち主がどんな人物であるか言い当てる推理が醍醐味と言えるのだ。
極端に言ってしまえば殺人すらも必要でない。ただそれが主題に持ってきやすいだけなのだ。

ホームズはいつも初めて会った人がどういう職業で、どんな経歴を持っているか簡単に言い当てる。
こんな「小さな推理」がたまらなく楽しい。そして短編には、そういった要素がたくさん詰まっている。
たまに、もうどうしてもシャーロック・ホームズが読みたくなる時があるけれど、
この不思議な魅力はいかんともしがたい。


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恐怖の谷

2008年10月23日 00:23

『コナン・ドイル』著 延原 謙 訳 新潮文庫 258ページ

シャーロック・ホームズの長編シリーズ第4弾。
これで最後の長編になる。一番完成度が高いと言われる前作の「バスカヴィル家の犬」より、
私はこちらの方が好きかも知れない。少し打ち解けた話し方のホームズがGOOD。
シャーロック・ホームズのシリーズは、カテゴリー「コナン・ドイル」を参照してください。

今回の事件は、宿敵モリアティ教授の影が見え隠れする。
表面上はきわめて立派な教授で、学問もあり才能もあり、問題ない人物に見える。
「シャーロック・ホームズの思い出」で、その対決が語られるが、今回は横へ置いておこう。

事件はホームズの元に届いた暗号の手紙から始まる。
いつもの鮮やかさでその解読に成功したホームズとワトスン。
「内容はバールストンのダグラスに危険が迫っている」というものだった。
時同じくして警部のマクドナルドが、全く同じ内容を伝えるためにやってきた。
かくして、彼らはバールストンへ赴く。

死んだダグラスという男は、散弾銃で顔を打たれて悲惨な死に方をしていた。
生々しい死体の腕には謎の刻印。暗号のメモ。片方しかないダンベル。
地元警察が事件に有力な情報をつかみ、調査に進展を見せている中、
あくまでも自分の仮説を曲げないホームズは、今回も彼流の調査で犯人に迫る。

犯人逮捕のために、彼がした行動といえば…。
殺人現場の書斎に、一晩こもること。ワトスンから借りた大きなこうもり傘を持って。
結果が確定するまでは明確な答えを披露しないホームズ流に、周りはイライラしっぱなし。
しかし、それに従うしかないのも事実。一晩をすぎて彼の下した結論は…。

ワトスンはホームズのことを「実生活における劇作家」だという。

「私の内部からは芸術的な素質が湧きおこって、好演出をしつこく求めるのですな。
 われわれの職業というやつ、ときに結果を美化すうような膳立てでもしないことには、
 まったく単調で目も当てられないものになりますよ。(中略)

 電光的な推理や巧妙なわな、起こりうべき事柄への鋭い洞察、大胆な仮定のみごとな的中。
 こうしたものこそわが生涯の誇りであり、生きがいというものじゃないでしょうか?」

こうして、劇的な結末が見事に披露されるのである。
長編シリーズはその背景の深さがもう一つの楽しみ。
深い因縁に基づいた事件で、今回もその説明のために本編の半分が取られている。
長編シリーズがここで終わってしまうのは非常に残念なところ。

次はモリアティ教授との対決を楽しみに取っておこうと思います。
そういえば、ホームズが映画化されるようで…。コミック版のを元にしたアクションっ気の強いものになるとか。
「ボヘミアの醜聞」で出てきたアイリーン・アドラーが出たり、モリアティ教授が出たり、
割りと原作とは違った内容のようですね。うーん、見に行くかは微妙なところ。
ホームズはあのガリガリな体躯と、ちょっと変人気味の性格がイイと思うのですが…。
そこを監督にはぜひ表現して頂きたいものです。


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バスカヴィル家の犬

2008年08月20日 22:27

『コナン・ドイル』著 延原 謙 訳 新潮文庫 266ページ

ドイルの長編では3作目。
これまでのように二部構成でなく、一つの流れで進み、
事件が最初から最後までスピードを失わない。

西部イングランドの荒野に忽然と現れた怪物。
らんらんと光る双眼、火を吐く口、全身を青い炎で燃やす犬の伝説が
その土地では語り継がれてきた。村人たちは、「バスガヴィル家の呪いの犬」だという。
はたして、魔犬は本当に伝説の怪物なのか?

新しくバスカヴィル家へ領主としてやってきたヘンリ卿に魔の手が迫る。
依頼を受けたホームズとワトスンの二人は、それを防ぐことができるのか…??

他の推理小説と違って、情景豊かに繰り広げられるドイルの長編シリーズ。
今回は特に舞台となるデヴォンシャの自然を大いに活用した作風が良い。
泥沢地であるとか、土地の起伏、底無しの大沼、濃い霧、
ホームズ本来の面白さに加えて、そういった「フィールド」が話の奇抜さを更に一段押し上げる。

特に今回注目すべきところが、犯人の手強さ。
基本的に長編はその長さだけあって犯行の手口やトリックも複雑になる訳だが、
それにプラスして、今度の犯人は狡猾。馬車を尾行したホームズが珍しくそれに失敗。
御者に乗っていた人間というのを問い詰めてみると、犯人はホームズという名を騙って馬車を降りていったと証言する。
漂う「してやられた」感。しかも今回は一度きりではなく、数回出し抜かれる。

ただ、このホームズという男、やられっぱなしで黙っているような人間ではない。
むしろ、犯人の知能が高ければ高い程、目を輝かせて、嬉しそうな顔をする。
何度か犯人に網を張るが、逃げられてしまう。
しかし、次第に網を手繰り寄せる力は強くなり、その範囲も狭くなっていく。
シャーロック・ホームズの手腕がここら辺から光り始める。

ホームズの新しい一面は見られなかったけれど、
王道を行く展開に、流しソーメンのごとくスーッと読み終わってしまいました。

それにしても、長編はほのぼの感がなく本当に残酷な殺人で生々しさがあります。
こういう(まぁ本来の推理小説的な)事件を読んだ後は、
短編の軽い(?)事件もまた読みたくなりますなぁ。


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シャーロック・ホームズの事件簿

2008年06月07日 23:53

『コナン・ドイル』著 延原 謙 訳 新潮文庫 333ページ

ホームズシリーズでは後期の作品群。短編10作を収録。
ここまでくると、ワトスンとホームズのコンビも阿吽の呼吸とでもいえばいいか、
ホームズが愛用するタバコやヴァイオリンのように、ワトスンもその思考に
なくてはならない存在になってきたようだ。

今回興味を引かれたのが、ホームズ自らが綴った事件簿が二作入っていること。
回想録という形で、これまでのストーリーはワトスンがホームズと共に解決したか、
または彼から聞いた話を、物語としているのに対し、今回「白面の兵士」と「ライオンのたてがみ」では、
彼が筆を取ったという形式のものだから面白い。

特に「ライオンのたてがみ」は、「小さな農場へ引退したい」と言っていたホームズが、
実際に南イングランドの浜辺へ別荘を構えて、隠居生活を始めてから起こった事件であり、
作者自身も含め、ホームズシリーズの晩年期を思わせる。

少し残念なのは、ホームズの見せる推理が文章的に多く取り入れられなくなったことで、
「つまらないような些細な事からでも、推理を導き出す」という彼の魅力が、紹介されつくされてないのではないかと思う。
ただ、彼の人間味に関しては得るところが多く、例えば「覆面の下宿人」では、顔に大怪我を追った女性が、
自殺するのを押しとどめたりする。それが感情的に説得するのではなく、
いかにも冷静に理路整然と行うのが彼らしい。

そして、彼の人間味が一番出ていたのではないかと思うのが、
「三人ガリデブ」の作品の中で、ワトスンが犯人に銃で撃たれるところ。
ワトスン本人も言うように、「マスクのような冷ややかな顔の影に、こんなにも深い誠実と愛情を秘めている」のだと。
普段は冷静沈着なホームズも、この時ばかりはうろたえ、唇は震え、ワトスンを心配した。
こういった垣間見せる彼の人となりが、楽しめる作品が多かった気がする。

なんだか、明らかに読む順番を間違えてしまっている。正確な発表順というわけではないが、
長編と短編に分けると、流れはこんな感じ。
長編…「緋色の研究」→「四つの署名」→「バスカヴィル家の犬」→「恐怖の谷」
短編…「冒険」→「思い出」→「帰還」→「最後の挨拶」→「事件簿」→「叡智」
最後の「シャーロック・ホームズの叡智」だけは、翻訳時に割愛した部分をまとめたもの。

WEBで調べればすぐ分かることですが、あくまでも参考までに。


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四つの署名

2008年03月24日 20:13

『コナン・ドイル』著 延原 謙 訳 新潮文庫 196ページ

シャーロック・ホームズ第二弾。登場からいきなりコカインでラリってるホームズ先生です。
「何か面白いことないかな~」と思っているところへ、うってつけの事件が転がり込んできます。

もの静かな美しい女性、モースタン嬢は自分の身に起こっている不思議な出来事をホームズに打ち明ける。
毎年高価な真珠が一粒ずつ送られてくる事。送り主はまったく分らない事。
しかし、どうもそれが何年も前に失踪した父と関係がありそうな事。

「久々に面白い事になりそうだよ、ワトスン君」
ニヤリ。ホームズは頭を使っていないとまるで廃人のようになるが、仕事となれば別人のように眼を輝かせて生き生きする。

話の趣旨はこうだ。モースタン嬢の父は10年前インドへ行っていた。
現地からの帰りにロンドンから手紙をよこし、「父さんもうすぐ帰るからな~待ち合わせは…」と連絡しておいた。
しかし、ついに父は現れなかった。それから数年後、彼女のもとに大粒の真珠が毎年決まって送られてくるようになる。
それが数年続き、今年になって「あなたは不当な仕打ちを受けている。正義の補償を受けるべきだ。
疑わしかったら友人二人連れてきなさい。警察には決して言わないで下さい」という手紙が届く。
ホームズとワトスンは、二つ返事にその友人役を引き受けることにする。
どこへ連れて行かれるかも分からない馬車に揺られて、三人は暗闇の中を進む。

推理小説の紹介の辛いところは、どこまで書いていいか分からないところですね。
面白いところは書けないし、触りだけ過ぎると興味がわかない…。
感想だけ述べるなら、一作目の「緋色の研究」より面白かったと思います。
ホームズの人となりがもっとよく分かったので、満足かな。
手掛かりがつかめなくてヤキモキするところが可愛かったり、
犯人が逃亡するのを追いかけるシーンは、すごく迫力があったり…。

シャーロック・ホームズのファンをシャーロッキアンというそうですが、
彼らのように内容を分析したり…という楽しみ方ではなくて、
単にミーハーな気持ちで読んでました。
いやあ、かっこいいなあ~ホームズ。

もちろん内容もよかったですよ。
殺人現場に残された「四つの署名」という言葉。それに基づく深い憎しみ。
バックストーリーは推理小説につきものですが、ホームズシリーズはスケールがでかい…。
この作品の次に発表した「シャーロック・ホームズの冒険」から短編が始まりますが、
それとは違った長編ならではの味わいが出ていたのではないかと思います。


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緋色の研究

2008年02月19日 19:37

『コナン・ドイル』著 延原 謙 訳 新潮文庫 205ページ

シャーロック・ホームズ。職業、顧問探偵。身体的特徴は6フィートと長身だが、細身。
鷲鼻、角ばった顎。見かけによらず武術に精通、侮りがたし。
その他の特徴、ヘビースモーカー、バイオリン演奏を巧みにこなす。
だが、曲目についてはいささか無名のものが多く、おそらくはその時の思考内容をそのまま楽曲にしていると思われる。
文学の知識、皆無。哲学の知識、皆無。天文学の知識、皆無。政治学の知識、わずか。
植物の知識、アヘン、毒物については詳しい。ガーデニング知識無し。
地質学の知識、一見で土の違いを当てる事が可能。科学の知識、深淵。…etc。

シャーロック・ホームズの特徴を挙げれば、だいたいこんなものだろうか。
むっつりと何時間も黙ったまま、椅子に座って考え事をしていることもあれば、気分よく話しまくる事もある。
昼夜を徹して何かの実験にいそしんでいる事もあり、そうかと思えば何もせずボーっとしている事もある。
変人の魅力というのだろうか。彼に惹かれずにはいられない。
とにかく、ホームズは格好いいのだ。

記念すべき、シャーロック・ホームズ第一弾。
発表当初は注目されず、作者のコナン・ドイル氏は「も~、ホームズなんて書かねえぞ~!」と思ったそうですが、
その後、アメリカの出版社からお声がかかり、第二弾を書く事になったのです。
アメリカ人は、ホームズを世に出したのは自分たちじゃい!と胸を張って言うそうですが、
そうですね~それくらい誇ってもいいと思います。永久にホームズが忘れ去られていたよりかは。

さて、今はもうお馴染みの助手ワトスン博士ですが、彼とホームズが知り合い、共同生活を始めるいきさつも分かります。
とある研究室を訪れたワトスンは、いきなり「ついに完成したよ!ひゃほ~い」と狂喜している変な人(笑)に出会います。
彼こそは、今しがた血液反応を正確に知ることができる新薬を発明したばかりのホームズだったのです。
しかし、その喜びようといったら、女性から見れば可愛いのなんの。

「は、は、は~!どんなもんです~!」
手を絆創膏だらけにして得意げに微笑む彼は、
どことなく母性本能をくすぐるものがあります。

最初は、このへんちくりんな男と住むことをなんとも思っていなかったワトスンですが、次第に彼の仕事に興味を持ち始めます。
たま~に、お客が来たかと思うと、自分は気を利かせて部屋を出るのですが、何か家で書類を作っているわけでもないし、
する事といえばそのお客を出迎えることと、何かの実験と、バイオリンを弾いてるのと…フラッといなくなるくらい。

そんなある日、観察力のもたらす力についての新聞記事を読んだワトスンは、「ばからしい!」と批判する。
「いや、それ、僕が書いたんだけど」ホームズはそこで初めて、自分は顧問探偵であることを明かす。
初めこそ彼の突拍子もない推理に疑いの目をかけていたワトスンだったが、次第に彼の度肝を抜く推察力に、興味を覚えだします。

そして、ある事件にワトスンも同伴してついていくことにするのですが、全くもってそれは不可解な事件の始まりだった。
外傷のない死体。なのに血で書かれた文字。さっそく虫眼鏡を覗きながら観察を始めるホームズ。
急展開で進んでいくストーリーで、気がついたら読み終えています。
後に残るのは、他のシリーズも読みたい!という燃えるようなもどかしさでした。

ヘビー級にお薦めです。


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シャーロック・ホームズの冒険

2008年01月16日 19:19

『コナン・ドイル』著 延原 謙 訳 新潮文庫 394ページ

「ふむ、ワトスン君、君はこの事件をどう思うかね?」

ハンチング帽にパイプを咥え、虫眼鏡を覗きこむ姿はもうお馴染みのもの。
こんな面白い小説を今まで放っておいたのが悔やまれる!というほど面白かったです。

「鋭い推理の運びぶりはまことに驚嘆すべきもので、私としては彼の仕事の方式を研究してみたり、
一見不可解な事件を、テキパキと片付けてゆく巧妙・神速な方法を、
あとからたどってみるのが、何よりも面白くてならなかったのである」

彼の助手であり、よき相棒のワトスン博士はこう言う。
非凡人なホームズと違って、彼は私たち読者に近い存在。
わくわくしながらページを進めていくうちに、ワトスンが橋渡しとなって、
私たちはホームズと一緒に事件を解決することになるのだ。

ある日、帽子を拾ったホームズは、その持ち主はどんな人間かワトスンに訊ねる。
「僕には何も分からない」
「分からないはずはない」
「じゃあ、君はどう推理するか聞かせてくれたまえ」

「この人物は知能がすぐれていて、今は零落しているが、過去三カ月以内にかなり裕福な時期があったこと。
昔は思慮深かったが、今は退歩の傾向がみられる。それにともない、飲酒癖があり、妻には愛想を尽かされている…」
ホームズはひょうひょうと答える。
「冗談ばっかり!」
「冗談なものか」
この帽子の流行は三年前のもの。品物は非常に上等で、その後安物も変えないとしたら、
零落したとみて間違いない。帽子についてる留め具は、買う時に風で飛ばないようにと
特注でつけたもので、当時の思慮深さを思わせる。今は紐が切れたのもつけ替えずにいる。
以前ほどの思慮深さがなく、意志が弱くなったことを物語っている。
妻に愛想をつかされたというのは、長い間ブラシをかけていない事から分かる。

紐解いてみれば何てことはない。その推理が単純なほど、読者はニヤリとしてしまう。
そして、その快感が過ぎると、今度は自分で推理がしてみたくなる。
例えばレストランで食器が片付いていない机を見て、
「食事をしていたのは二人で、仕事関係者に違いない。
タバコの本数が多いし、まだ煙も出ている。帰ってそう時間はたっていない」とか。
こんなどうでもいい推理、意味無いよなあ…。幼稚な推理をして自分に笑う。

しかし、ホームズはどんな小さなことでも見逃さない。
結果的に事件解決に全く関わりない事でも。
ホームズは言う。
「大きな事件ほど単純な事が多い。日常の些細な事に奇怪は潜んでいるのだ」

平凡な毎日をバカにしてはいけない。推理は誰にでも楽しめるものなのだ。
コナン・ドイルはこう伝えたかったのだと思う。
「見ているだけで、君は観察をしていない」
ホームズの一言一言が、生活を変化させてくれるだろう。


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