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ハツカネズミと人間

2009年10月27日 01:08

スタインベック』著 大浦 暁生 訳 新潮文庫 156ページ

文句のつけようがない名作を、久々に読んだ気がします。
前回の「赤い小馬」と同時購入しましたが、こちらの方が読みやすく入りとしてはお薦め。

<あらすじ>
大恐慌時代のアメリカ。多くの労働者たちは、日々長時間働き、
もらったお金は博打や、酒に使っては、また働くという事を繰り返していた。

ソルダードの農場へ労働者としてやってきた、レニーとジョージ。二人は対照的だった。
頭が悪くてすぐに物忘れをするが、心は優しく力持ちのレニー。
頭の回転が速く、いつもレニーの面倒を見ている小男のジョージ。

農場には黒人のクルックス、老人のキャンディなど、孤独な者ばかり。
その中で、二人はいつか力を合わせ自分たちの土地を買い、ささやかながら生活をする事を夢見ていた。
いつか自分の牧場でウサギを飼う事をレニーは夢み、その情景をジョージはいつも語って聞かせるのだった。
そんな二人の愚かしくも純粋な夢に、黒人と老人も、しだいに感化されていく。

しかし、レニーは農場の息子の妻を、悪気はないが手に掛けて殺してしまう。
ジョージはレニーがリンチを受けることを防ぐため、苦渋の決断をするのだった。
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中編小説の分類になるのでしょうけれど、非常に上手くまとめられています。
感想としては…後味が悪い結末ですが、温かさが残る作品。

労働の最下層にスポットライトを当て、その孤独な渡り者が多い中で、
二人の固い友情を詩的に描き、そして最後には現実を突き付ける。
単に「悲劇として落とす」のではなく、最後まで美しい友情を保つ所が一線を引く。
それは、登場人物の一人、黒人のクルックスと、二人の交わすセリフが対照的な事に表れる。

「黒人だから、飯場へ行ってトランプ遊びもさせてもらえねえとしてみろ。
 どんな気がすると思う?ここに閉じこもって、本を読んでなきゃならねえとしたら?(中略)
 人間には仲間が必要だ―そばにいる仲間が」(クルックスのセリフ 101ページ)

「だって、おれにはおめえがついてるし―」
「おらにはおめえがついている。おらたちゃ、そうさ、たがいに話し合い世話をし合う友達どうしなのさ」
(ジョージとレニーのセリフ 144ページ)

たとえ、ささやかな夢は叶わなかったにしろ、弱者へ共感溢れる優しいスタインベックの人柄が伺えます。
大浦さんの訳も、非常に読みやすくてイイです。
これだけ良い作品なら、当然他のものにも期待がかかるところですが、
スランプのような時期もあったらしく、結構作品には生みの苦しみを伴う作家だったのでしょうか。

ストーリーのまとまりから映画化しやすかったのでしょうか。
ゲイリー・シニーズジョン・マルコビッチ主演で「二十日鼠と人間」というタイトルで映画も出てます。


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赤い小馬

2009年10月16日 23:07

スタインベック』著 西川 正身 訳 新潮文庫 156ページ

カリフォルニア州に、サリナスというところがある。
二つの山に挟まれた長い谷が続く土地で、作者はここで生まれる。
「赤い小馬」はサリナスが舞台となっている。

主人公ジョーディ少年が繰り広げる、日常のストーリー。
厳格な父、やさしい母、雇い人のビリー、そして遠い昔に思いをはせる祖父。
有名な「怒りの葡萄」とは違って、牧歌的な作品。

<あらすじ>
「贈り物」、「大連峰」、「約束」、「開拓者」の四つが収録されている。
赤い小馬が出てくるのは、最初の「贈り物」。
ジョーディ少年が父親から「自分の馬」を初めて買ってもらい、
乗れるようになるまで、丹精込めて育てていく。
しかし馬は途中で伝染病にかかってしまい、死んでしまう。
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一つ一つの短編の内容は繋がっているという訳ではなく、単独で読むことができる。
同じフレーズが出てきたりして、詩的な効果があったりアメリカ作家らしくない感じ。
どうもアメリカ文学と言うと、人間味ある作品ではなくハードボイルドなイメージだけど、
(ドイツ系の人だったからか?)とても丁寧な心理観察がされている作品だと思います。

ストーリーの流れは地味ではあるんですが、スタインベックはこの作品の解説で、
これを通して伝えたかった事を書いています。作家の家族の者に死が訪れ、
「子供はすべて不滅なものと信じていたことから、完全に打ちのめされてしまった」と。
また、「おそらく人は、男であれ女であれ、このようなことから初めて成人するのであろう。
初めて「なぜ?」という疑問に接して苦しみ悩み、それを受入れ、やがて子供は大人になっていく」
この姿を描きたかったんだとか。この作品は、スタインベックの自叙伝なんですね。

「スタインベック短編集」では、どういうものが収録されているのでしょうか。
この本と一緒に購入したんですが、それもまた読んで、作家の多彩なところを垣間見ようと思います。


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