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失楽園(下)

2009年09月30日 01:25

ミルトン』著 平井 正穂 訳 岩波文庫 431ページ

ついにサタンの誘惑に負け、禁断の実を食べてしまうイヴ。
前半とは打って変わって、サタンの出番はガックリ減ってしまいます。
天国とか、天使サイドの話は、サタンよりお堅いので、ちょっと残念(笑)。
下巻では、7~12巻(1674年出版された第二版は1~12巻だった)の内容です。

<七巻>
ラファエルとの会話が続いているアダム。どのようにして地球が創られたのかを問いかけ、
あの有名な旧約聖書の冒頭部分「光りあれ!」から始まる、天地創造の6日間が語られる。

<八巻>
今度はアダムがラファエルに自分が生まれてからのことを語る。
この人、どうしても天使に帰ってほしくないようで、何かと話題を考え出す。
神様に「自分はアナタのように完璧じゃないから、伴侶を下さい!」とお願いして、
神様ももちろん承知済みで、肋骨からイヴを創ったことなどが語られる。
ひとしきり話が終わると、ラファエルは念押しでサタンに警戒するよう伝えて帰っていく。

<九巻>
一方サタンは…虎視眈々と人間を陥れる機会を狙っている。
イヴはアダムに仕事を分担して、別々に働くすることを提案する。
アダムはサタンを警戒する余り反対するも、「私は騙されません!」と自信アリのイブ。
その説得に負けて二人は分かれて仕事をしたのが運のつき…。
サタンは蛇に乗り移ってイヴを誘惑する。イヴは人間の言葉を話す蛇に驚くが…。
「蛇の私が、禁断の実を食べて、人間の言葉を話せるようになったんだから、
 人間のあなたがこの実を食べたら、どんな素晴らしいことになるか。きっと神になれますよ」
こんな風に騙して食べさせてしまう。愕然となるアダム。しかし、死なばもろとも…と自分も実を口にする。
たちまち羞恥が彼らを襲い、イチジクの葉で恥部を隠すことに。こうなったのもお前のせいだ!
いや、アンタのせいでもあるのよ!と二人は罪をなすりつけ合う。

<十巻>
天使たちは、二人が禁断の実を食べたことを知り、天国へ向かう。
「自分たちは見張りをして、やることやってました」と神様へ報告。神様も「うん、そーだね」と納得。
神様の御子(キリスト)は、二人のもとへ行き、「食べたね?」と糾弾。言い訳もできない二人。
罰として、妊娠の苦しみやら、寿命やら、額に汗して働くことになる。蛇にも罰が与えられ、
今のような地を這う姿に変えられてしまう。地獄からは「罪」と「死」が地上にやってきて、世界は急速に変わる。
アダムはイヴに「この蛇め!どっかいけ!」(酷い!)と罵るが、従順なイヴを許し、神様へ一緒に祈りをささげる。
他方サタンは、嬉々として地獄へ凱旋し、万魔殿で「俺はやったぞー!」と演説するが、
なんと仲間の堕天使や悪魔たちは、みんな神様の呪いで蛇に変えられてしまう。そしてサタンまでも…。

<十一巻>
二人が悔い改めて祈りをささげているのを見て、キリストは神様に「ほら、あんなに反省してますよ」と言う。
神様も少し納得したようで、「うん。でも楽園は追放するよ、ミカエル、行っておいで」と命令する。
ミカエルは地上に降り、二人に楽園追放になる事を説明。絶望する二人に憐み、これから未来に起こる、
様々な歴史をアダムに見せることにする。(イヴは眠らされる)。
内容は旧約聖書のカインアベルの兄弟殺しから、ノアの方舟までが幻で展開される。

<十二巻>
引き続き、旧約聖書の内容。アブラハムモーセなどが語られる。
戦争、殺戮、飢餓、疫病、淫蕩など、ありとあらゆる悪が世の中にはびこる事が、
すべて自分が禁断の実を食べた原罪によるものだと知り、悲しみにくれるアダム。
しかし、ミカエルは最後にはキリストがイヴの子孫から生まれ、贖罪をすることを伝えると、
アダムは喜び勇んで「新たな地で、正しい行いをして生きていきます!」と宣言する。
目覚めたイヴも「アナタについて行きます!」とアダムに言い、二人は名残惜しそうに楽園を後にする…。
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サタン氏、蛇に変えられてからお見受けしませんが…(笑)。
最初はイヴの姿を見ただけで、「なんて美しいんだ!」と一瞬復讐すら忘れるサタン。
でも、結局は「人間も自分たちの境遇と同じ目にあわせるゾ!」という気持ちを思い出し、
禁断の実を食べさせる…何とも中途半端な彼が好きだったんですがね~。

罪のなすりつけ合いをする二人のシーンが、やはり印象的でした。
確かにイヴは罪を犯したけれど、本当に悪を知らずにいた方が良かったのか?
自分が王様だと思っている狂人は「幸せ」だろうが、幸せには見えない。
無垢に描かれるアダムとイヴの世界より、奈落の底のサタン達の愚かさが健気に見えてしょうがない。

ミルトンが生きたのはシェイクスピアと同年代のイギリス、ロンドン。
清教徒革命に翻弄され、その間に作品の方向性も変わっていったらしいですが、
一筋縄にキリスト教といっても、政治や宗派が絡み合っていた時代。
深く理解するには、まだまだ時間がかかりそうです。ちなみに、失楽園は失明したミルトンが口述した作品。
他の作品として、キリストが地上に生まれてから以降の「復楽園」(楽園の回復とも)、
「闘士サムソン」「言論・出版の自由」などがあります。


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失楽園(上)

2009年09月15日 00:54

『ミルトン』著 平井 正穂 訳 岩波文庫 443ページ

キリスト教三大文学、最後になりましたが「失楽園」をやっとこさ紹介です。
アダムとイヴが、楽園追放を受けるまでの裏話…といえば分かりやすいでしょうか。
いわゆる聖書の「外伝」みたいになってまして、上巻の主役格は堕天使となったサタン
長編の叙事詩という形式で、上巻には1~6巻の内容が入っています。
以下、失礼を承知で砕けまくったあらすじを紹介します。

<一巻>
天上で神様に叛逆して見事に負けたサタンは、地獄で目を覚ます。
メタメタにやられてる天使たちを鼓舞して、もう一度神と対峙しようぜ!と呼びかける。
堕天使たちはそれに答えて、パンデモニウム(万魔殿)を建設し、軍事会議を開くことに。

<二巻>
会議では「全面戦争だ!」とか、「いや、どうせ勝てないし、このまま暮らそーぜ」とか
色々な意見が飛び交うけれど、結局は今度新しく作られる世界(地球)で、
人間という生き物が作られるらしいから、そいつを悪(悪魔の側)に引き込んでやろう!
そして神に嫌がらせしてやろうぜ!という事に相談は決まる(この時点で少し笑える)。
誰が遥か地上までその任務を果たしに行くかという人選には、サタン自らが名乗り出る。

<三巻>
神様は「サタンが人間を堕落させる」と予見する。でも、「自分は人間を完全無垢に作ったし、
堕落するのは人間の自由だから、やれることやったし、後は知らん」と意外に淡白。
そこで神の御子(キリスト)が「自分が死んで償いますから」と申し出る。
キリストが十字架にかけられるのは、ここらへんの裏話があるんですね~。
一方サタンは、宇宙までやってきて、そこにいた大天使ウリエルに「人間はどこに?」と訊ねるため、
勉強熱心な天使に変装して、その居所を聞き出す(そんな簡単に騙されていいのか、大天使!)。
どうも神様以外は、「偽善」を見破れないらしい。天使は疑う心が無いからか。

<四巻>
エデンに来たサタン。アダムとイヴのあまりの美しさに「チクショー羨ましい!むかつくー!」と大激怒。
ウリエルはその形相を見て「あいつは堕天使だ!」と気が付き(遅い)、すぐ警備のガブリエルに報告する。
ガブリエルは二人の天使を派遣する。眠っているイヴの横で、ガマに変身し、その耳に
幻想を吹き込んでいたサタンを天使たちは見つける。槍でガマをつつくと、
「やべ!見つかった!」とばかりにサタンはびっくり(ここ、笑うとこでしょう)。連行されてしまう。
あわやガブリエルとサタンが一戦…というところまでくるが、天秤座が「戦わない」方に
重きを置いていたので、サタンは逃げ出す。

<五巻>
神はラファエルに、アダムとイヴに「サタンに気をつけろ」と忠告してくるよう命じる。
ラファエルは二人に、サタンがどんなに悪い奴かを語って聞かせる。
それは、天上にてサタンが神に叛逆して大戦火を巻き起こした物語だった。

<六巻>
引き続き、サタン軍vs神軍の戦争が語られる。サタンはミカエルと一騎打ちしたとき、
ぐさっと脇腹をやられ、「転々ところげ廻った」らしいです。相当痛かったんでしょう。
サタンは大砲を発明して一旦は優勢を見せるが、天使たちは山を根こそぎ投げつけたりと、
かなり無茶苦茶な攻撃をしてくる。三日目にキリストが出てきて、サタン軍は雷でボコボコにされる。
そうしてサタン軍は地獄へ落ちたのだ…というところまでラファエルは話し、サタンに気をつけろと諭す。
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聖書の内容やギリシア神話など、かなりたくさん出てきます。
キリスト教は唯一神ですが、そういう古典も融合しているんですね。
でも、基本はやはり「神」と「キリスト」を誉めたたえてるので、ミルトンが熱心な信者であったのは間違いない。
神がサタンが叛逆するのを止めなかったのも、サタンによってそそのかされた者が、
後になって改心すると、悔しいのはサタン自身でしょ?と余裕そのもの。全知全能なのです。

平井氏の訳に関しては定評が高く、私自身もかなりイイと感じました。
詩句の美しさは格調高く、それに加えて難しすぎずに楽しんで読める。
注目すべきは注釈。実に100ページ以上に及び、文献は広範囲に用いていらっしゃいます。
文学科でミルトンを研究する人なら、こんなありがたい本はないでしょう。
元が難しい叙事詩なだけに、その威厳を損なうことなく見事に現代語へ訳した平井氏に素直に感動!

下巻においては、アダムとイヴがついにサタンの手に落ち、楽園を追放されます。続きが楽しみですね~。


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