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寓話 3

2008年06月07日 22:50

『谷口江里也』著 ギュルダーヴ・ドレ画 アルケミア出版 237ページ

ついにこれにて最終巻。ラ・フォンテーヌの寓話第三巻。
240話すべて読み終えた時には、その揶揄の多さに半ば呆れつつ、
よくもここまで人の愚かさ、切なさ、美しさを発見できるものかと溜め息が出ました。

一巻はこちら→http://hihidx.blog115.fc2.com/blog-entry-123.html
二巻はこちら→http://hihidx.blog115.fc2.com/blog-entry-127.html

寓話は動物をモチーフに話が展開するものが多いですが、今回は人間がモデルの話も多かった気がします。
そして、「さて、あなたはこのあとどうしますか?」とか、「今後どうなったと思いますか?」という
問いかけのストーリーが多く、とても哲学的。

基本的に谷口さんも、ラ・フォンテーヌも、人生観は良い意味で楽観的だったようで、
現代風に言えば、ナンバーワンよりオンリーワン。素直な気持ちで人生を歩んでいきましょうねという印象。
人間が賢いだなんて思わないこと。でも、卑屈になりすぎるのもいけない。
これだけ揶揄されると、何をしてもダメな気になるけど、そうではない。
ようは平凡に生きろということか?こんな風に何百年も前に書かれた物語が、
今も我々の心に響くのだから、人というのも進化のない生き物なのかもしれません。

今回もお話を一つ。

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「イヌと妄想」

川縁にいた二匹のイヌが、川上からゆったり流れてくる溺れた動物を見つけた。
二匹のイヌはそれを見て、大きな肉の塊が流れてきたと思って喜んだ。
ただ、問題はその獲物が川の真ん中を流れていて、どうも岸辺の方へは流れてこなさそうなことだった。

そこでこのイヌたちはとんでもないことを考えた。
まず一匹のイヌは、問題は獲物と自分たちを隔てている水にあると考えた。
そしてあろうことか、川の水を全部自分で飲み干してしまおうという暴挙にでた。
イヌの頭は既に妄想でいっぱい。善は急げとゴクゴク水を飲み始めた。

もう一匹のイヌは、なんとバカなやつだろうと、それを眺めていた。
そんなことが出来るわけないのは、このイヌには考えるまでもないことだった。
そこでこのイヌは全く違う方法を考えた。

それはつまり、風の向きを変えれば何とかなるのではないかということだった。
風は川岸から向こうへ吹いており、その風に吹かれて獲物はどんどん遠のいているように思えたからだ。
それは一見、論理的な考えといえば言えなくもなかった。
問題はどうやって風向きを変えるかということだが、そのイヌは何と
大きく息を吸って風を吸い寄せ、その力で変えようとしたのだった。

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いやはや妄想とは恐ろしい。
我々も妄想と計画の違いには気をつけなければいけませんね。


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寓話2

2008年05月25日 17:17

『谷口江里也』著 ギュルダーヴ・ドレ画 アルケミア出版 237ページ

先日紹介した、ラ・フォンテーヌの「寓話」二巻。
今回も80話を収録。一巻は下記を参照してください↓
http://hihidx.blog115.fc2.com/blog-entry-123.html

一つ一つは短い話といえど、読み進めながらあれこれ考えていると、
結構読みごたえがあるもの。面白くてすぐに二巻に取り掛かりました。
男の着ている外套をどちらが脱がせることができるか…有名な「北風と太陽」の話とかも載っていて、とても懐かしい。
子供のころ読んだ時には、ただ面白い話と思っただけなのになあ…。
ウサギとカメの話の考察も載っていて、興味深かったです。
勝敗が見えきった勝負をしても、周りからはさげすみの目で見られるだけ。
ウサギは最初からそんな事をするつもりはなく、本当はカメの方から持ちかけた勝負だった。
ウサギはまんまと騙されて…とかなんとか。

80話を読んでみて、不思議なことにウーンと手を止めて考えてしまう話は、どこか似ているものが多く、
私の場合は男女の関係の話とか(笑)、人間はなんて無知でちっぽけなんだろう…というのを示唆している話に惹かれるようです。
心のどこかで、そういうのを反省している自分がいるんでしょうか?そう思いたいものですね。

今回も一話だけご紹介します。

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「ハゲワシと戦争」

ハゲワシは何故か戦争好きだ。
それもしょちゅう仲間同士で戦争をする。
もちろん負傷者が出るし、死者だって出る。
なのに戦争をする。

どうして戦争が好きなのかも、その原因もよく分からない。
必ずお互いを悪く言い、それぞれが正当性を主張する。
悪いのは相手側であって、それも徹底的に凝らしめないといけない程ひどいらしく、
だからこうして戦争をするのだという。
そうしないと、善悪の基準や社会ルールが成り立たないのだとか。

では、その戦争でどちらかが勝ったとして、
勝った方の言い分が優先されたとしよう。
すると負けた方が間違っていたと反省して、
勝った方のルールに合わせていくのかというと、
そう上手くいったためしはない。
むしろ、相手に屈した悔しさが次の戦争を引き起こす
要因となってることだって少なくない。

そうして戦争は繰り返され、繰り返されて、憎しみだけが深まっていく。
だからハゲワシはこれから先も激しく憎み合うのかというと、
一羽一羽に聞く限り、どうもそれを望んでいるわけでもないらしい。

戦争の主役は男のハゲワシだが、妻もいれば子供もいるし、あるいは恋人もいる。
むろん傷ついたり、死んだりすることで嘆き悲しむハゲワシはたくさんいる。
どんなに怖い顔をしても、傷つけば血を流し、悲しければ泣く。

考えてみると、うんざりするほどの血が流れた。
なのにどうして、ハゲワシは戦争をするのだろう。
血や涙をいつまでも流し続けるのだろう。

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歴史で繰り返してきたことを、こんな端的に愚かしいことだと表現できたものでしょうか。
動物がしているのを見ると笑えてしまうのに、私たちは武器をもって真剣にやっているのですね。
ドレはこの話に、戦争に行く一家の主を描いています。家族がその人にすがっています。
ドミノを止めるように、どこかでこの連鎖をストップできたらいいのですが…。


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寓話1

2008年05月15日 22:29

『谷口江里也』著 ギュルダーヴ・ドレ画 アルケミア出版 253ページ

「神曲」のところでも紹介したアルケミア出版のドレ画本。
原文はイソップの寓話をもとにラ・フォンテーヌが書き上げたものを、
現代風に読みやすく翻訳したもの。

寓話とは…ウィキペディアによれば、
「道徳的な教訓を伝えるための短い物語。しばしば、動物などを登場人物とし、
不可解で神秘的な印象を与えることも多い。そのような表現法を寓意と言う」。
童話がその代表例になるのですが、イソップ童話でご存じの通り、有名な話が多いです。

一番最初に来たのが、アリとキリギリス。この本ではアリとセミでしたが。
あとは、ツルとオオカミの話とか。平たい皿と、筒のようなコップでスープを勧めるアレですね。

ちょっとよく分からんなあという作品もありましたが、全部で80話収録。ちなみに3巻まであります。
それにしてもやっぱりドレの絵はすごい!一つの話の最初から最後まで絵で表現していったのは、
今でいうマンガのような感じ。いや、ドラマかな。媒体が紙であっただけで。
寓話は動物の話が多いのですが、それを表現するのに人間を描いたりしています。
そこはドレの判断でしたのでしょうが、そこがまた面白い。
こんな風に、この芸術家は教訓を捉えたのか。。。と。

イソップが最初に寓話を描き上げたのにもモチーフがあり、民話であるとか、
もともとあった「おはなし」をイソップが「寓話」の形態で再構築したそう。
ラ・フォンテーヌに関しては、イソップ寓話形式を継承しつつ、
そのモデルを動物に変えたりして、かなり自由に踏襲している。
そして、その100年後。ドレが挿絵を彼なりの理解と解釈でつける。
そしてさらに、谷口さんが現代風に翻訳して、この本の完成である。

数段変化の賜物である。読んでいるととても楽しい。
谷口さんの軽い口調の翻訳で、動物たちが可愛らしく登場しているのに、
話していることはとてもシュール。教訓を与えるイソップと、表現するラ・フォンテーヌ。
そしてドレ画が添えられて…フルコースの完成といった感じ。

折角なので、私がとても面白いと感じた一話を紹介しますね。

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「中年男と二人の奥様候補」

あるところに独身の中年男がいた。
そろそろ結婚でもしようかなと思った時、お金もそれなりにあったので、
それらしい素振りをするとその気になって女はいくらでも寄ってきた。

やがて二人の女を奥さま候補にして、屋敷に出入りさせるようになった。
一人はうら若い女。一人は年増の女。お互いに競い合って譲らない。

ある日、三人でいる時に、どちらともなく二人の女が男の頭の毛の手入れを始めた。
白髪交じりの髪の毛だったので、どちらの女も自分の年齢との釣り合いを考え、
若い女は白髪ばかり抜くし、年増の女は黒い髪ばかりを抜いて、
しまいには男の頭の毛はすっかりなくなってしまった。

男は内心呆然となったが、そこは年を重ねただけあって、落ち着いてこう言った。
「ありがとうご婦人がた。おかげでようく分かった。
 女というものが、男を自分の都合のいいように好き勝手にするものだという事が。
 これが髪の毛だから良かったものの、知らずにどちらかをめとっていたら、
 遠からず丸裸にされるところだった」

こうして二人は締め出され、屋敷には貧相な頭をした一人の男だけが残った。

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さて、あなたはこの中からどの話に興味を持つでしょうか。
そこも人それぞれ違いがあって、面白いものですね。


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